短編集
□お花見
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<大久保SIDE>
待たせておいた中岡君を探して縁側まで来てみれば
かずと中岡君が楽しそうに話している姿が見えた。
かずは寺田屋に居た時間の方が長いゆえ
寺田屋の連中を親しく思うのは当然なのだが・・・。
中岡君とは歳も近い分
かずはさして警戒することもなく近寄りすぎる。
かずが中岡君の髪に触れるのを見て
内心穏やかではない。
まったく、坂本君や武市君ならともかく
中岡君にまでこんな感情を抱くとは
私も少々大人げないか・・・。
己の心を少しばかり諌めてから
二人の会話に割って入った。
適当な理由を付けてかずを中岡君から遠ざける。
だが、二人の会話はしっかり聞いていた。
かずが呟いた言葉も。
・・・花見か。
そう言えば、最近かずが伊集院殿の仕事を手伝うようになって
お互いの時間が合わず、すれ違ってばかりであったな。
かずは言わないが寂しい思いをさせているのかもしれん。
花見に連れて行ってやれば少しは気晴らしになるか。
しかし・・・。
花見に行くにしても
寺田屋の連中は表だって花見に出かけられる様な立場ではないし
かと言ってあの連中を呼ばぬとなると、かずが残念がるのは目に見えている。
日取りを調整しているうちに桜は散ってしまうだろう。
うむ・・・、ならば・・・。
私は花見に関して一計を案じることにした。