短編集

□陽だまりの贈りもの
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武市said

以蔵が怪我をして帰ってきた日の事を僕は知っている

いつもなら一度寝てしまうと起きな麻里耶さんがあの日に限っては起きてきた
麻里耶さんが以蔵の事を心配して手当てしたいと申し出ていたが
以蔵は断りそのまま去っていった。
その背中を静かに見つめていた麻里耶さん


やはり君は以蔵の事を想ってくれているのだね
僕はこの時に確信したよ

以蔵もまた君の事を想っていると言う事もね


どうしてかって?
それはその夜以蔵が他の女子を抱かなかったからだよ
人を殺めた後精神を持たすため僕が以蔵に女子を抱くよう教えた
それ以後以蔵はその事を守ってきた。
己の精神を保つために・・・


だが何時からだろう・・・
以蔵が女子を抱く事をやめてしまったのは


麻里耶さん君はどう思っているんだい?
あの時以蔵がそっけない態度で麻里耶さんに接していたのは
己の欲と格闘していたからだと僕は思う


以蔵は君の事を本当は欲しているはず
でも触れてしまう事で君を穢してしまうそう思うと出来ないのだろう
君を抱かないのは以蔵なりの君への想いなのかもしれない


麻里耶さん君に教えてあげたいけど・・・僕も男でね
少なからず僕も君を気にいっている
以蔵にはもっと人として男としての器を大きして欲しいとも思っている


だが・・・
このままでは以蔵も麻里耶さんも互いの想いに気づかずに
過ぎてしまうだろう

何より沈んだ笑顔の麻里耶さんは見ていられないからね
此処は僕が少し協力をしよう


僕は温かな陽だまりを全身に受ける麻里耶さんの元へと足を向けた
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