お題/シリーズ

□Ver.喰
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「喰くん…」
「あれ、名無しさんちゃん。どうしたの?」

廊下を歩いていると、後ろから呼ばれたので振り返るとそこには俯いている名無しさんがいた

「一緒に喰くんの部屋行ってもいい?」
「いいけど…」

名無しさんは俯いたまま喰の服の裾を掴み、一緒に歩き始めた

「名無しさんちゃん、着いたよ。入って」

喰は名無しさんの背中を押し部屋に入れる

「とりあえず座りなよ。紅茶淹れてくるから」
「うん…」

少しして紅茶を持った喰が戻ってきた
紅茶をテーブルに置き、ソファの上で膝を抱えている名無しさんの隣に座り頭を撫でて優しく問いかける

「それで、どうしたの?なんで泣いてるわけ?」
「これ…」
「何それ、本?」
「すごく悲しい失恋の話で…」
「はぁ…それで?自分もこうなったらどうしようとか考えた?」
「うん…」

内容を思い出したのかまた目に涙を浮かべる

「相変わらず馬鹿だね。名無しさんちゃんは僕と別れたい?」
「嫌っ!」
「でしょ?僕も君と別れるつもりはまったくないから安心しなよ。名無しさんちゃんがもう嫌だって言っても放してあげない」

喰はそう言いながら名無しさんの顔を両手で挟み、目から零れた涙を親指で拭った


「名無しさんちゃん、僕の目を見て」
「ん、」
「これから先ずっと一緒にいてあげる。だから名無しさんちゃんも僕から離れないって約束してくれる?」
「うん。私も喰くんとずっと一緒にいたい」

名無しさんの返事にうっすらと口元に笑みを浮かべた喰はそのまま軽くキスをした
そして顔から手を離し、名無しさんを抱き寄せて耳元で囁いた

「さっきまで泣いてたくせに顔真っ赤にしちゃって…可愛いね、名無しさん」
「そんな…っ!」
「あっそうだ。もうその本は読まないよね?僕が捨ててあげる」

喰は名無しさんの手から本を取り上げゴミ箱に放り込んだ

「あっ…」
「なに?またあんなの読んで泣かれても次は優しくしないけどいいの?」
「もう読まないもん」
「名無しさんちゃんの物語は僕がハッピーエンドにしてあげるから」
「…う、うん」
「今の間は何…」
「いや、別に…寒いとか思ってないから…!」
「へぇ…今日は君のこと思う存分いじめられると思うと嬉しいよ」
「えっ、なんで…」
「名無しさんちゃんに拒否権はないから」

楽しそうに笑っている喰とは対照的に名無しさんの笑顔はひきつっていた



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