□真昼の月のように
7ページ/29ページ

「、、、」

人生相談の人じゃないんですけどね、あたしは

家まで送って部屋に上がり込んだはいいが
横でずっとくだを巻いてる松井さん

名前は玲奈ちゃんて言うらしい

ビール片手に出るわ出るわ上司の愚痴が
立て膝ついて新橋の酔っぱらいか

「んのやろー、手柄横取りしやがって!!くやっっしーーっ!!しかもセクハラまでしやがってあのボンレスハムがっ!!」

「、、パンツ見えてるよ、玲奈ちゃん」

恥じらいのハの字もない
前も思ったけど、萎えるこの人

注意しても直す素振りもない

「あんたね!ちゃら男のくせに細かいことうるさいっ」

まじ帰りたいんですけど
送んなきゃよかった

あたしはため息をついて玲奈ちゃんからピールの缶を取り上げる

そんなに言うならちゃら男とやらになってやろうか

「お酒で酔うより、気持ちいい事してあげようか?」

あたしの声に何事かと目を合わせてくる

「嫌なことなんか忘れられるよ?」

固まる身体を押して床に横たえる
なんだ、簡単じゃん

婦警さんなんだから、もっとー、、、

「いっって!!!」

胸に触れようとした手を思いっきりひねられる

「強制猥褻罪。婦女暴行未遂」

座った目で睨まれる

「はい??家に上げたの玲奈ちゃんじゃん!」

「手を出していいと誰が言った!!」

そりゃそうだけど家に入れて酒飲んでたらそりゃ出すだろ

「可愛げないなー!だから上司にも煙たがられんじゃないの?!」

手首をさすって投げる言葉に反論が来ない
予想ならぶん殴られてもおかしくないのに

不思議に思って見ていると
大きな目から涙がボロボロこぼれた

「え?!」

「なによー、、あんたみたいなガキに何がわかるってのよー、、」

かすれた声で肩を震わせる
あたしは思わずその身体を抱きしめた

「ご、、ごめん。玲奈ちゃん。嘘だよ!ね?」

「バカヤローー、、」

胸に頭を抱くように力を込める
いきなりこんな弱々しい姿を見させられて
頭がついていかない

綺麗な髪に顔を当てるとすごくいい匂いがした
指に絡ませて梳くと気持ちいい

「玲奈ちゃん、頑張ってるんだね。」

よしよしと頭を撫でる
大人って大変なんだな

黙ってあたしに撫でられてる玲奈ちゃんが
小動物みたいで可愛かった
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ