□真昼の月のように
1ページ/29ページ

都会の夜は騒がしい
複数の車線が交差する大きな道は
どこまで続いていくんだろう

ブゥーー、、ン

バイクに跨り風を切っていたあたしの腰で
携帯が振動する
脇道に駐車して画面を覗いた

「にゃんにゃん?どうしたの?」

【珠理奈〜?いまどこ??お腹空いたよー!】

電波に乗って聞こえてくる甘い声は一緒に住んでるお姉さん

小嶋陽菜と言えばそこそこ有名なモデルさんだ

「ごめんごめん!あと15分くらいだから。何食べたい?」

耳に響く可愛い声にもっと聞いていたくて次々話を振る
終いには『早く帰ってこい』と強制的に切られた
緩む口元を電話に押し付けて脱いだヘルメットに手をかける


ピピーーー!!!

(え?なに?!)

後ろから響く笛の音にビクリと背中を正す

あたしか?なんかした??

「ちょっと!あなた!」

目の前に走り込んできて仁王立ちをする婦警さんに目を向けると、なかなか可愛い顔立ちをしていた

長い黒髪とくりっとした瞳

「なんですか?なにかしました?」

被りかけたヘルメットを外して聞くと片手で交差点を指す

「交差点5メートル以内は駐停車禁止です」

(こまかっ、、!)

「いや、ちょっと電話を、、」

「次からはもっと安全なとこに止めてくださいね。」

あたしの言い訳を遮って片手を出してくる
その手のひらを見つめているとほら!と急かしてきた

「え?」

「免許証」

「違反とるの!?」

マジでか、警告かと思った、、

「当たり前です。教習所で習ったでしょ?!」

早く出せと手を振られて渋々財布から免許証を出す

金欠なのに、、きついな
何とかならんものか

「ね、お姉さん可愛いね。名前教えて?」

違反書になにやら真剣に書き込む横顔に話しかける
自分で言うのも何だけど、女の子を落とすのは得意だ

「、、、」

「おねーさん?」

さらさらの髪の毛が気持ちよさそう
思わず手を伸ばそうとしたら睨まれた

「余罪つけましょうか?」

え?なんだそりゃ、、

「ちなみになんの罪?」

「わいせつ罪」

萎えた
なんだこの人

あたしはため息をついて大人しく紙を受け取る
にゃんにゃんに慰めてもらおう

「1週間以内に振り込んでくださいね。もう二度としないように!」

「はーい。松井さん」

「!!」

びっくりした顔で振り向かれる
自分で書いてんじゃん、ここに

あたしは片目をつぶって紙をひらつかせる

「名字おんなじなんだね。また会えるといいな。お姉さん、ホントに好みなんだ」

笑って言うけど松井さんはお怒り顔だ
早く離れないと本当にわいせつ罪問われかねない

あたしはヘルメットを被ると走り出した

早く、にゃんにゃんとこに帰らないと
可愛いご主人様がむくれちゃうから
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ