Labyrinth to Rain (長編)

□幻滅メゾピアノ
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とにかく




びっくりって感じ





まさにこれから後を追おうって時に

一人称を引きとめようと





出会ってから今まで

聞いたことないくらいの大声で叫んだのが







玲香だったから









『え…なんでダメなの?』

「別に…名前が行かなくたっていいじゃん(笑)」






だけど不機嫌なワケではなく少し笑ってて

それが余計に違和感で




いつもとは違う雰囲気が

あの日の会話を思い出させる






「そんな仲良いワケじゃないんでしょ?
そこまでしなくてもさ…」

『けど今日の生田さんおかしいんだよ、様子が変っていうか』


















「…よく見てるね」

『…なんだよ、それ』







きっと

うまく言えない何かを伝えようとしてる

それは分かるんだけど




その何かが分からない一人称









「…追いかけなきゃダメなの?」







変わった声色

顔を見れば



口元は少し尖ってて

どこか陰りのある表情で





だけど今の一人称には




うしろめたさより

彼女の言葉より





優先したいものがあって








『なんか…気になるんだ』








集まる視線には見向きもせずに

店を飛び出した












「……いかないでよ」





















『どこ行ったんだよ…』





勢いに任せて飛び出したのはいいものの

生田さんが走っていったのは駅とは反対方向


おまけに夕方のこのタイミング

当然街には人が溢れてる








『こっちじゃなかったのかな…』






見つけようにも同じような格好をしてる女子高生は大勢いて


視界に入ったと思えばすぐに通りすぎるし

振り返る暇もないくらいに候補はいるはずなのに








『…あ』






人混みに紛れてた

君の不安そうな後ろ姿を



なんで一人称は




見つけられたんだろう









『生田さん!』









家族がいなくなったあの日以来

叫んだことなんてなかった




それに…








「苗字…くん」








暮れなずむ街中で



驚いたように

振り向いた君に



近づけば近づくほど

なぜか悲しみを忘れていくから






「どうして…帰るって、言ったじゃん」

『帰り道、逆だよね』



「…」

『…』



「…知ってる//」

『絶対ウソでしょ、駅反対方向だよ?』

「本当だってば!遠回りしたい気分だったのー!」

『…はいはい(笑)』









不思議だけど




引き寄せられるのは

目が離せないのには





きっと





何か理由があるんだろう。
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