Labyrinth to Rain (長編)

□XYZ
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『好きって…そんな急に言われても…』

「ちゃんと答えてください、彼氏として」

『…』







今までも聞かれたことはあった




付き合うきっかけは何だったとか

どういうところが好きかって





だけど一人称の答えはいつも曖昧で




本音半分

恥ずかしさ半分の



分からないって解答ばかり





今だって相手が玲香の友達ではあるけれど

そのパターンでかわす以外の方法を知らない一人称なのに…








『…』








一人称

何で黙ってるんだろ







「どうして何も言わないんですか」








言葉が出てこない


これ以上の間が生まれると

一番最悪な解釈をされかねないのに



多分さっきの質問が

今まで聞かれてきたのとは根本的に違う気がしてるから








「言わないってことは…違うんですか」







焦る中で沸いてくるのは


きっと彼女も玲香のために真剣で

いい友達なんだろうなってことと








何でこの人に

そんなこと言わなきゃいけないんだってこと







抑えようとすればするほど








「やっぱり生田さんって人のこと…」







焦りは

苛立ちに変わって









『関係ないだろ』









張ってた緊張の糸が


一瞬切れた







『生田さんは関係ないし…一人称と玲香のことに口出しすんな』











それからのことは

よく覚えてない











「名前くん…?」








気づいたら

心配そうな表情をした七瀬ちゃんに

声をかけられてて









「大丈夫?」

『…うん』








どれくらい

こうしていたんだろう




気づけば彼女はいなくなってて

いつもと違う席から覗く

小さな窓ガラスに自分が映ってた







「何か…飲むもの、持ってくるね」

『…うん、ありがと』







後悔が

瞳の奥にしっかり残ってる



どうしていつもみたく誤魔化せなかったんだろ


しかも彼女の名前が出たあのタイミングで




偶然なのか

それともあの人が言いかけたみたいに…







頭の中はそればかりで






玲香の心配をしてたさっきの一人称は


もういなくなってた…
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