乃木坂 (短編)
□13 new qualia
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13日
金曜日
昼休み
あすか「はい、これ」
『…』
一人称の目の前に差し出された
二枚の紙切れ
みおな「どうしたの?なんか驚いた顔してるけど」
『当たり前だろ…てかいきなり何なの、その紙』
あすか「映画のチケットだよ」
『映画…?』
急に喋りかけられて
勢い良く机に詰め寄られて
目の前を埋め尽くしてきた例の二人
突然すぎて全く理解不能な一人称
…
『とりあえず…説明してください』
あすか「…ってことだから、行ってらっしゃい」
『いやいやいや、全然意味分かんないんだけど』
みおな「なんで?そもそもタダで映画見れるだけでめっちゃ有難い話じゃん」
『まずそこがおかしいだろ!なんで急にタダで映画見てこいなんて言うんだよ…』
しかもなんでよりによって…
みおな「よだっちょと二人で…って?」
一人称の気持ちを見透かしたように
疑問を言葉に変換してくれた飛鳥
ありがたいけど分かってんなら前もって教えろよな…
と一人称が口に出す前に
なぜか盛大なため息をついた二人
たまに出るこの流れめんどくさいんだよな
常に一対二の構図だし、めっちゃ疲れるし…
面倒だとは思いながらも
理由は気になるから一応話を聞いてみると
この間の帰り道
祐希が一人で消えちゃった事件が原因らしい
あれ以来、様子がおかしいって…
別に一人称の前では普通だし
前と変わらず一緒に帰ったりもしてるけど…
でも言われてみれば
ちょっと回数減った気もするような…
特に学校の帰り道とか
前まで一人称が気にとめてなかったのもあるんだろうけど
最近は横からチラチラこっちを覗いてきたり
なんだよって聞くと何でもないって言われるし目も反らされるし…
そんなこともあってか
心当たりがまったくないってワケではないけど
『だからって…一人称がアイツを映画に連れていかなくてもイイじゃん』
みおな「でも今日は名前じゃないとダメな理由があるんだよなぁ…(笑)」
意味深な発言に加えて
何故かドヤ顔まじりに笑う未央奈
どうしよう、この雰囲気
全然逃げられる気がしない上に
悪い予感しかしないんですけど…
『何だよ…その理由って』