乃木坂 (短編)

□beside you
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『…うー』





鳴り止まない目覚まし時計を



手探りで探して

乱暴に止める





『…はぁ』





何でこんなに

身体が怠いんだろ…



あれか

昨日夜更かししてゲームやってたから…





いや

それだけじゃないか…



きっと一番の原因は

いつもの日課





朝イチからさっそく始まる



あの大変な試練が待ち受けているからだ







『…行ってきまーす』







学校へ向かう支度が完了して



玄関の扉を開ける



正直なところ

学校までの距離を考えればもう少し遅くまで寝れるんだけど



一人称には十分な余裕を持って

家を出ないといけない理由がある









さっそく向かうのは学校ではなく



すぐ隣のアイツの家



いつも通り

毎朝訪れる一人称のため

施錠されてない玄関の扉を開けて



いつものように

リビングへ顔を出す



長い年月の付き合いもあるから

気を遣わない緩い感じで会話も始まって





『おはよ、優里さん』

「おはよー名前!毎日ごめんねー?」

『いーよ、すぐ起こしてくるから』





いつも通りのやりとりを済ませ

目的地である2階へと向かう



あっという間に階段を上り目的の部屋の前まで来ると

ためらいもせずに

ノックなしでドアを開ける





『…』





目の前には





「…Zzz」





これまたいつも通り

ぐっすり眠っている無防備な姿





『…おい、起きろ飛鳥』

「…」





飛鳥っていうのが

この微動だにしない女子の名前



ちなみにさっきフランクに会話してたのは飛鳥の母親で、優里さんって人なんだけど



ここの一家が引っ越してきたのは一人称が中学一年生の時で

それ以来のご近所さんだから

お互いの家族は知り合いで仲が良い



そんなこともあって

いつからか優里さんから飛鳥を朝起こしてくれないかと頼まれた



最初は渋ったけど

うちの両親が断るなって雰囲気で睨んできたし…



そんな時でさえ飛鳥に至っては我関せずって感じでずっと本読んでたし…



まぁ、文句言ったところで何も変わらないだろうからしぶしぶ承諾して…



いつも遅刻ギリギリだけど

どうにかこいつを起こして連れていく日々を送り始めた




何故かは分からないけど飛鳥は一人称が来ないと起きないから…

責任を感じて毎朝こうしてやってきてるんだけど





『それにしても…本当に起きないよな、お前』





声をかけながら髪の毛をわちゃわちゃにしてやると

顔を背けてゆっくりと起き上がった飛鳥




「…うるさい、触るな//」

『だったら自分で起きろ』

「……無理、眠い」





ちなみにこれでもマシになったほう

始めた頃は声をかけても全く起きなかったから遅刻も経験したりで焦っていたけど…




近付いて髪の毛さわったり

顔を覗きこむって攻略法を発見してからは大体起きてくれるようになって…





だけど

よくよく考えるとおかしいよな



あんだけ身体揺すっても起きないのに

なんでただ距離を近づけただけで目を覚ますんだろ…





今さらすぎる疑問に

頭を悩ませ始めたけど





「…おい」

『ん?』

「パジャマ着替えるから、早く出ろ」

『あ……すみません』





そんな時間を与えられる間もなく

一人称は部屋から放り出された…
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