乃木坂 (短編)
□teenAge jealousy
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『なぁ…一人称の話聞いてる?』
「…」
『おいこら、あすかってば』
「…」
絶対に
私は悪くない
いや…
細かいことを言えば
私にも問題があるのは分かってるんだけど
今日に関しては
悪いのは多分名前のほうだから
だから
謝らない
事の発端はついさっき
私は名前といつも通り一緒に帰る予定で
でも毎日家へ直帰するのもどうかと思って
久しぶりに寄り道したい気分だったから
どこへ行こうか授業中から考えてて…
名前が喜びそうな場所もついでに考えて…
まぁ、その…
ちょっと楽しみだったわけですよ
で、放課後になると隣のクラスの名前が迎えに来てくれたんだけど
『あすかー迎えに来たー』
「今行くー」
みおな「あの飛鳥がちょっとウキウキしてる…(笑)」
「…してない//」
ゆうき「いや、でもちょっと顔赤くなっとるし…(笑)」
「……なってない///」
私たちのいつものやりとりを見てた
友達二人が軽く茶化してくるから
真実かどうかはともかく否定をし続けて
素早く荷物をまとめて教室を後にしたんだけど
「…別に浮かれてないし//」
『ん?』
「なんでもない……こっちの話//」
ついさっき
指摘されたばかりの頬の色を隠したくて
うつむきながら隣を歩いて
「…//」
『…』
軽い沈黙の中でふと思う
私と名前って
付き合ってるんだって
ほんの数日前まで
普通のご近所さんだったはずなのに
まぁ
私は割と前から名前のことが気にはなってたんだけど…
とはいえ告白したりとか、そんなの出来ちゃう器量はないし
気持ちを伝えられたとしてもフラれたらその後が気まずくなりそうだし…
なんて思いつつ過ごしてたら
ついこの間その関係を変える出来事が起こって…
『なんかさっきからボーっとしてない?』
「あ…いや、別に」
あの日に深く浸りかけていたところで
ちょうど声をかけられて
気づいたらもう学校の門を出たところ
おまけに全然喋らなかったなのか
名前がちょっとだけ心配そうな顔をしてて
「ちょっと…色々思い出してた」
『色々?』
「名前が……なんか、いきなり告白してきた時のこととか…//」
『ちょっ、恥ずかしいから思い出すなよそんなの!てかめちゃくちゃ緊張しててあんまり覚えてないし…//』
「…なんか恥ずかしいセリフ言ってたよね(笑)」
『そうだっけ……一人称が覚えてるのはチューしたことくらい…ってぇ!なんで叩くんだよ!」
「…それは覚えてなくていい///」
あの時は名前が急に好きとか言うから…
気持ちが一緒なんだって思えたら嬉しくなって
実はかなり舞い上がってたというか…
って思い出してたら余計に顔赤くなりそうだし…
恥ずかしいけど…
本当チョロいな、自分
『てか今日どうすんの?いつも通り帰る?』
なんて思ってる間に
名前は私に叩かれた痛みから立ち直ってて
その切り替えの早さに驚きつつ
私もこの恥ずかしさから脱却しようと思い
「あ、それなんだけど…」
例の放課後デート的なやつを
提案しようと言葉にしかけた時
「あすぴーさん!」
唯一
私のことを不思議なあだ名で呼ぶ
あの子の声が聞こえてきた。