Labyrinth to Rain (長編)

□暗い部屋 明るい人
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『はぁ…』






黒板に広がる

数える価値もない数字と

記号の羅列から目を反らしながら呟いた言葉



視線の先は

この席からだと少し見えづらい

昨日とは正反対の空を斜めから見上げてみる








『…』









気休め程度にと

軽い気持ち


けれど澄みわたる空とはうらはらで

余計に追い込まれていく気がした














何もしてないくせに疲れて

何に疲れたのかも分からず迎えた相変わらずの放課後



窓を開けて頬杖をつき

校庭の所々にできた水溜まりをただ見下ろす




こういう時間は気に入ってる






『…あ』







ふと思い浮かんだ友人二人の顔


そういや昨日は逃げたんだったっけ

もし今日も誘われたら断るの気が引けるな…









『…声かけられる前に帰るか』








一人の居場所を求めて

重い体が帰り支度を始めた時


廊下が少し騒がしいことに気づく








「おい、校門の前にすっげー可愛い子いるぞ!」

「マジ?誰かの彼女とか?」








『…』








「けどおかしくね?何で傘持ってんだ?」

「さすがに今日は降らないっしょ(笑)」








『…』







心当たりはある


けどまさか…







そうは思いながらも

足早に向かうその場所





どんどん濃くなる



昨日の雨と

彼女の顔




滅多に急がない自分がいつの間にか走ってることに驚きつつ


過去最短の時間で駆け寄った人で溢れた校門








「ねぇ、誰か待ってんの?」

「つーかこれから暇?遊び行かない?」






聞こえてくる男達の群がる声

それをかき分けて辿り着いた先には








「あの、傘を返しに来たんですけど…
どこにいるんだろ…」








昨日と同じ困り顔で

辺りを見回している




傘を持ったあの子がいた。
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