Labyrinth to Rain (長編)

□想ひ出喫茶
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出会って二日

遅めの自己紹介を終えた後で

家を出た一人称たち



もちろん彼女を駅まで送るため

最初はそのつもりだったんだけど







『もういいって、傘なんか』

「ダメだよ拾いに行かなきゃ!」

『…』






回復したと思ってた体力がまた落ち込んでいく



理由はもちろん例の傘

別に意地を張ってるワケじゃないんだけど彼女が…




生田さんがどうしても返すって聞かなくて







「大丈夫!絶対この道から学校までのどこかに落ちてるはずだから」

『…』







意気込んだままの大きな歩幅で

一人称の先をどんどん歩いていく


おかげでかなりスムーズに学校付近へ戻って来れたけど







『やべ…忘れてた』







思い出してしまった

放課後の全力ダッシュ



間違いなく明日は登校した直後から質問攻め


基本周りは女子が絡むとテンション増して食いつくやつばかりだろうし

それをあれこれ説明するのも面倒で…







『サボろっかな…明日』







だけど

最近の一人称にしてはかなり軽い悩み

いつもディープに落ち込んでるから慣れない感覚



これだと逆に落ち着かな…








『って…あれ?』






いつの間にか

視界から消えている生田さん

ついさっきまで目の前を歩いてたはずなのに







まさか迷子?






それはさすがにないか…

とは思いつつも辺りを見回していた時







「だからそれ、俺らの友達の傘なんだって!」








聞き覚えのある声が

どこからか響いてくる




その残響に足は引き寄せられて

耳に届く会話が少しずつ近くなり始めた






「私もそれと同じの落としたんですけど…」

「ちょっと待って、その友達に傘落としてないか確認するよ」






案の定



聞こえてきたのは彼女と

もう一人の普段から聞き慣れている声






嫌な予感が確信に変わった瞬間

追い打ちをかけるように携帯電話が鳴り出して




おそるおそるポケットから取り出し

通話をスライド



死角だった曲がり角の先にいたのは








「「えっ…」」

「おーい、苗字くん!傘見つけたよー!」







固まって動かない二人と

探し物を見つけて微笑む彼女だった









『…どうも』
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