Labyrinth to Rain (長編)

□ALONE
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「名前ごめん!ほんっとぉにごめん!」

『いいよ、もう慣れてるから』

「わざとじゃないの!今日こそは遅れないようにって準備してたの!」

『はいはい…それより今日どこ行くかちゃんと決めてんの?』

「えっ、今日は名前が決めてくれてるんでしょ?」

『いや、お前が昨日行きたい場所あるって行ってたから…』

「…」

『…』









「…そうだっけ(笑)」

『…』









こんな風に

何も起こらないけど

笑って過ごす二人の時間




止まない雨を

忘れられる時間





変わるはずなくて

もしもなんてこと考えてもいなかった




なのに今は…








『…』

「…」








笑顔も会話もない中

初めて待ち合わせには遅れずに

かつデートの目的地を決めてきてた一人称の彼女



だけど隣を並んで歩くその距離はいつも通りで




慣れない感覚のままで選んだのは

うっすらと記憶の奥に残ってた公園



そしてその場所に踏み込むのを待ってたかのように

気がかりだったあの出来事に触れる声が聞こえてきて







「こないだごめん…若月、お店来たんだよね?」

『あぁ…うん』

「変なこと聞いちゃって、名前に悪かったかなって言ってた」

『いや…一人称のほうこそ変な空気にしちゃったし』







抱えてた心配のわりには普通のやりとりで

自然と軽くなる気持ち


そのままの流れで会話も続いて







「ねぇ、ここ覚えてる?」







どうやらこの場所は玲香と来たことがあるみたいで…




そう言われればそんな気もするけど

はっきりとは思い出せなくて







「私のいちばん好きな場所」






加えて懐かしむようなその口調が

悪い予感を忘れるほどに穏やかで






『へぇ…何かあったっけ?』






ひょっとしたら

さっきのはいつもの気まぐれかもしれないと


懲りずに勘違いをしてた一人称は








「…やっぱ覚えてないか(笑)」

『…え?』








苦笑いの後の寂しげな顔と告白に



声も出せなかった








「ここで……名前に告白したんだよ?」







今も昔も一人称は

雨を遮るのに必死だったから


そんな言い訳は通用するはずもなくて






「私だけ覚えてたって…意味ないよ」







目に見えない罪の重さが

一気にのしかかった




















「……もうダメかな、私たち」








君の顔と




空の色が









曇りはじめた…
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