Labyrinth to Rain (長編)

□希望の詩は君のもの
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『じゃあ、制服取って来るよ』

「あっ…うん」

『多分…もう乾いてる頃だと思うから』

「ごめん、迷惑かけて…」





あれから

どれくらい時間が過ぎたのかな



ひとりぼっちの指定席で

二人のことを考えて

また別の二人のことも考えて





結局

答えは出ないままに




レジの前で立ち尽くしていた

彼女に声をかけたんだけど







「…大丈夫?」

『えっ?』







きっと悩ましい表情が

隠しきれていないせいで





「なんか…暗い感じするなって…」





また彼女を

誰かを困らせてる





『…うん、大丈夫』





甘えたり

強がったり



どっちつかずのあまのじゃくが

不器用に顔をのぞかせて





「…そっか(笑)」





おかげで気づかう君まで

苦い笑いを浮かべるから





『そういえば…松村は?大丈夫?』





もう少しだけでも

心に余裕があればと

別の話題へと反らしてみたけど





「…うん」





















「もう……バイトはやめるって」





















『……そっか』





悪循環からは

そう簡単に抜け出せそうになくて





『…じゃあ、また後で』

「……うん」





脆くて儚い

想い出の詰まったこの場所と





「…気をつけてね」





華奢な優しさと

後ろ髪引くような細い声に





『…うん』





一人称はゆっくり





背中を向けた





罪悪感を





背負ったように





まるで





君に嘘をつくように。
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