Heartache and Love Feel Inch (長編)

□try out a new life
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やってしまった



その感情のみで



一週間は過ぎ去ってしまい



春休みを満喫することもできず



迎えた始業式の朝





『…いってきまーす』





いつもより少し遅めに

重い玄関の扉を開く



今までならきっとクラス替えとか

新入生どんな感じかなとか

初々しい感情と共に前のめってただろうけど





『なんであんなこと言っちゃったんだろ…』





浮かんでくるのは

かつてないほどの罪悪感と





『けどあんな顔されたら…』





オレンジ色に照らされた

嬉し恥ずかしそうな彼女の表情





















『彼女……かぁ』





今さらだけど

高校生なのに初めての彼女が中学生って色々とやばいな、一人称



とは言っても2つしか歳は変わんないし

そんな気にしなくてもいいのか…?







いやいや。

そもそもこの関係が嘘から始まってることが問題なわけで



たまたま彼女が超世間知らずで

エイプリルフールを知らなかったってだけなんだから

いつバレるかも分からないし…





けど

あの日言ってたみたいに

平手は本当に一人称のことを…







やっぱり

嘘だったなんて言えない





『はぁ…』





ため息を通学路に吐き出してみても

新鮮さの欠片もない見慣れた景色のせいか

余計に足が重くて





『……はぁ』





解決の糸口を見いだせないまま

もう一度大きく肩を落として





『…一人称……どうすれば良いんだろ……』





脱力に拍車がかかった

そんなタイミングで










「名前ー!」





向かい側の歩道

青信号の下を駆け足で

手を振りながら近づいてくる友人に気がついて





『…ぁ』





離れていても

明るい笑顔がはっきり見えるのは



多分

気のせいじゃないと思う





「おっはよぅ!また会ったねぇ(笑)」

『…』

「…名前?」





彼女の名前は今泉唯依

同じ高校に通ってる同い年の友達で

ずーみんって一人称は呼んでる



去年クラスが一緒だったこともあって

女子の中では一番仲良いかな…



って思ってるんだけど





「どうしたの?なんか元気ないじゃん」

『ぃ、いや…//』





実は一人称

少し前から彼女のことが気になってて…



仲良くなるにつれて気さくに甘えてくれるようになって

しかもその時の笑顔が可愛くて



いつもならこのシチュエーションにも

ドキドキしながら歩いてたはずなのに





彼女できちゃったら

それはもう罪だよなぁ…





『え…っと、朝早いの苦手だから、まだちょっと眠くて(笑)』





けどその重みを直接ぶつけられるほどの勇気というか

勢いみたいなものは皆無だし



結局

好きって言い切れるまでには至ってなかったのかな…





「ならいいけど…」





とにかく今は少し疑いの残る表情に

いつも通りを装うしかないけれど





『そ…それにしても気になるよね、クラス替え』

「なるなるー!もう気になりすぎちゃってあんまり寝れなかったもん!」

『それは逆に気にしすぎだから…(笑)』





今日から一人称は高校2年生

また新たなスタートを切るわけだし

落ち込んでばかりもいられないよな…





難しいことは

後回しになっちゃうけど



今はとにかく

前を向いて歩こう…





「…クラス一緒にならないかなぁ」

『えっ、誰と?』





ほんの少し

芽生えた期待と





「さぁー、誰でしょー(笑)」

『ちょ…教えてくれないの?』





おバカっぽいうえにイタズラな



だけど



小さくて大きな笑顔を頼りに。
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