欅坂 (短編)

□The Inside War
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「名前…今なんて言った?」





放課後の屋上

驚いた様子の織田に聞き返されたのは


想いを寄せる同級生への決意を語った一人称の一言





『…明日、小林さんに告白する』





あ、織田っていうのはクラスメイトの女友達なんだけど…


彼女にはその小林さん、

小林由依さんについての相談はよくしてて…


そもそも一人称が彼女を好きになった理由はこいつ


1年生の頃、当時から仲の良かった一人称に

天使が舞い降りた!って意味不明なことを興奮気味に伝えにきたのがきっかけだった



けど織田って普段から可愛い女子には目がないし、

どうせいつもと同じパターンだと思って適当に流してたんだけど


あまりにしつこくその天使を見せたいって言い続けるから

しょうがなく一緒に教室を覗きに行くと




まったく同じ感情を抱いてしまったというワケで…



あれからもう一年


お互いに彼女への想いは色褪せず

織田にいたっては勝手にゆいぽんとかいう謎のあだ名で呼んでる始末



まぁ、その熱量のおかげなのか

一人称の悩みも理解してくれるし

フラットな性格でサバサバしてるから色々と相談はするんだけど…





「けど一回も喋ったことないでしょ?」

『まぁな』



「間違いなく名前の存在はゆいぽんに認知されてないよ?」

『…うん』



「ぶっちゃけ100%フラレるし、そもそもビビりのくせに告白できんの?」

『……厳しいな、お前』




天然なのか何なのか

たまにズバッと言ってくる織田



けど一人称が極度のビビりなのもまた事実

今まで好きな人がいても告白なんてしたことなかったし、すぐ諦めてた


けど小林さんのことはどうしても諦めがつかなくて…


今までの自分を変えるためにも一歩踏み出したくてその決断に至ったんだけど。




「応援はするけどなんか複雑だわ。
私もゆいぽん大好きだし…」

『そこをどうにか頼む!
織田にしかこんな話できないしさ、
なるべく成功率の高い作戦を一緒に考えて欲しいんだよ!』

「成功率って(笑)
フラれるの分かってるのにそんなこと言ってもさぁ…」

『頼むよ!』




両手を合わせ、本気の懇願

するとしばらく悩んだ後にこんなことを言ってきた




「じゃあ…こうしない?
名前が告るの手伝うから、名前も私のことゆいぽんに紹介してよ!」


『は?なんだそれ…』



人生初の告白に友達紹介を組み込めってことか?



小林さん、好きです!

それとこっちにいるのは友達の織田です…



みたいな感じ?

いやいや、ムリだろそんなの!




「ダメなら手伝わないよ」

『あー!分かった!絶対紹介するから!!
だから力を貸してくれー!』

「よし、交渉成立!」

『はぁ…』





自分でも思う

こんな調子で本当に告れるのかなぁ…って。
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