欅坂 (短編)

□into the silence
1ページ/4ページ









「そんなひっついたら歩きにくいよ…」

「いいじゃん別にー」






今日も一緒だ





やっぱり





噂通り付き合ってんのかなぁ





朝一でテンションの下がる光景を目の当たりにした一人称

今すぐにでもこの通学路を

引き返して家に帰りたくなるほどに



ショッキングな二人の後ろ姿



その内の一人は仲良しの男友達で尾関っていうんだけど




おぜ「ちょっ…理佐、痛い痛い!」




不思議なキャラで変わり者、でも気さくでいいヤツ

そして問題はその隣





りさ「だって赤ちゃんみたいで可愛いんだもん(笑)」





尾関にこれでもかと言うほどにくっついて

もたれ掛かりながら歩いているのが一人称の好きな女の子


渡邉理佐だ



尾関と理佐、そして一人称は去年まで3人とも同じクラスだったんだけど

特に二人とは関わる機会が多くて

一緒に時間を過ごしている内に



気付くと理佐のことが気になってた





けれど今年に入って行われたクラス替えで二人と一人称は別の組になってしまい

それだけでも落ち込む理由は十分なのに

前よりさらに仲の良さそうな後ろ姿に余計にヘコんで




今みたく学校の行き帰りはいつも一緒だから

ひょっとしたらもう付き合ってるのかもしれないけど

潔く聞けるほどの勇気はなくて



そうじゃなかったとしても

お似合いな二人の間に一人称が入り込む隙なんてない…






それは分かってるのに



まだこの胸が痛むってことは





『…好きなんだよなぁ』





寄り添う二人の後ろ姿と

諦めの悪い自分から目を反らしたくて



澄みきった青空をぼんやり見つめながら



一人称は再び学校への道を歩き始めた…
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ