欅坂 (短編)

□Diamonds
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「…」





真っ白な部屋

窓ガラスに映る自分は



側に置いてある花瓶に飾られた

色褪せた彩りに少し似てる





「…」





もう

慣れたけど



あまり

居心地は良くない



近いうちに

改善を目指すらしいけど



あまり

興味もない










そんな私の

唯一の趣味は





絵を描くこと





毎日のように

ここで絵を描いて



疲れたら眠る

それしかない





強いて

もうひとつ習慣をあげるなら



真っ白な壁に

唯一飾られている



白と黒で

描かれた絵を眺めることくらい





「…」





その絵は

抽象的で

何を現しているか分からない



誰かが有名な画家の

有名な作品だと言ってたけど

私には何が何だか分からない





「…」





眺めていると

息苦しくて



そこにある何かに

吸い込まれそうで





「…」





左腕に絡みつく

定期的に落ちる滴と

存続の枷を外して



私は

景色を変えた















抜け出した先で

辿りついた人の庭



冬から春へ向かう昼下がり

淡い日差しの下



子どもがいっぱい





「…」





この子たち

何歳だろう



夢とか

あるのかな



右へ左へ

東へ西へ

走り回る姿に巡らせる





「…」





友達って

遊ぶって



世界の中心って

片隅なのにって



また

取り残されて





私が

ひとり

消えてしまいそう










『すみませーん』






















「…?」





足元に

転がったボール



それを求めて

少し遅れて



誰かがやってきた。
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