日向坂 (短編)

□INSIDE OF KISS
1ページ/5ページ









『いらっしゃいませー』

「愛萌、オレンジジュースおねがーい」

「はーい」







学校終わりの放課後

今まさにバイト中の一人称





父親の知り合いがやってるこの店

スナック眞緒で日曜以外はほとんど働かせてもらってる




昔からよく家族でこの店へ遊びに来てたから

人手を募集してる今なら顔パスでバイトさせてくれるって話に飛びついたんだけど





働き始めて3ヶ月

子どもの頃には気づかなかったけど

この店には2つの不思議な特徴がある






まず1つ目

この店に来る客は枝豆とオレンジジュースしか注文しないこと

極々たまにお酒も出てるけど…





その理由として

来店するお客さんのほとんどがなぜか未成年の女性っていう…




あとよく来るのは常連のワカちゃんっておじさんくらいだし

きっとお客さんの平均年齢が日本一低いスナックだと思う




そしてもうひとつは

店員が個性豊かすぎること



店の看板であるにも関わらず異常過ぎる性格の眞緒ママ

それをさりげなくフォローしているバイトの愛萌ちゃん

そしていつも店の端でグラスを磨いている無口なマスター





客観的に見れば絶対変な店のはずなのに

なぜかそこそこに繁盛してるんだよな…








カランカラン…









そんなことを考えていると

お客さんが入ってきた




今のところ一人称が任されてるのは掃除だけだから

そこに集中して黙々と取り組もう





そう思った矢先









『いらっしゃいま…』









「名前、お疲れ」

『…』

「どうしたの?」

『…お前ほんと暇だよな、京子』






現れたのはお客さんではなく







幼なじみだった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ