日向坂 (短編)

□CALLING
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「はぁ…」






何回目やろ



集中せなあかんって分かってるのに



どうしてもボーッとしてしまう







「はぁ……いたっ」






繰り返す溜め息の隙間で

頭に軽い衝撃

傍をゆっくり転がっていくボール




そして






『ちょっと、そこのマネージャー』






私の名前を呼ぶ聞き慣れた声

振り向くとそこにいたのは







『なにボケッとしてんだよ』






ボールをぶつけるっていう子どもみたいないたずらを仕掛ける

アホな幼馴染みやった




名前は苗字名前


私と同じ高校1年生


なんだかんだの腐れ縁で今はクラスも部活も同じ


まぁ、名前はバレー部の選手で

菜緒はマネージャーなんやけど




そんな関係やから

全然気をつかわずに

いつも通りに言い返す





「うるっさいなぁ…っていうか今ボール当てたやろ」

『もしかしたら寝てるんじゃねーかと思って(笑)』

「部活中に寝るわけないやん、アンタじゃあるまいし…」

『悪いけどバレーやってる時だけは絶対寝ないんだよ、一人称は』






今は部活中

私たちが所属するバレー部は

次の春高予選に向けて練習中なのですが



さっきも言った通り名前は選手で

1年生なのにレギュラーで活躍してて

最近は調子も良くてチームから期待される存在

確かに練習も必死に頑張ってる




けど性格が割とお調子者というか…

特に幼馴染みの私にはグイグイ絡んでくる





『ほら、手止まってるぞーマネージャー』

「あんたがちょっかいかけてくるからやん…」





こういう面倒な絡みも日常茶飯事で

毎回反論していくのも疲れるんやけど

人見知りな私にとって緊張感を和らげてくれる数少ない存在でもあって…




「こらー名前!また菜緒にちょっかい出してー」




そんなことを考えていると

どこからか現れた

バレー部もうひとりのマネージャー

私たちの会話が聞こえたのか

さっそく名前にお説教をし始めた





『げっ、愛萌ちゃん』

「目を離すとすぐこれなんだから…菜緒、大丈夫?」

「私は全然…ってか名前、愛萌にビビりすぎやろ(笑)」

『び、ビビってねーし!』






彼女は宮田愛萌

私たちの同級生で

部活では名前のお目付け役




そして私にとって愛萌は





なお「ほんまに…幼馴染みってこんなのばっかりなんかな」

愛萌「名前が特殊すぎるだけでしょ?」

なお「そやな、名前って昔からアホやったし(笑)」

『全部聞こえてんだけど…』






私の数少ない

心を許せる大切な友達です。
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