日向坂 (短編)

□FALLING
1ページ/4ページ








ほんまに色々あった


ありすぎた昨日の帰り道



あの後

奇跡的に電話は鳴りやんだけど




家に帰るまでも

帰ってからも気持ちは不安定で



愛萌のこととか

自分の気持ちがどうとか

全部含めて考えてみたけど




どうすればええかまったく分からんままで…




そんな状態でずっと悩んでたら

いつの間にか朝になってるし

かと言って学校休むのもどうかとも思うし…



悩みに悩んだあげく

仕方なく行くことにしたんやけど









『いやー!今週のがな推しめっちゃ面白かったよな?』

「…」

『何回炊飯器のフタ開けんだよって思ったもん(笑)』

「…うん」






そんなこと知るはずもないコイツは

完全にいつも通りで


今も呑気に私を自転車の後ろに乗せて

ゆっくりゆっくり

人通りの少ない朝の通学路を進んでる



愛萌に好かれてるなんて一ミリも思ってないやろな


私のことなんて尚更…






『てか日曜の夜って凄いな!
工事中、けやかけ、がな推し…』

「…そやな」





今までは何にも考えず

握ってた制服の裾


自転車から落ちんようにって

それだけやったのに






『けどリアルタイムで見ると朝起きるのすげーキツいんだよな…(笑)』

「…うん」







今は色々考えてしまって

触るのもドキドキしてるのに






『……ぃ…おい、なーおー!』

「…ん?」

『ん?じゃねーよ(笑)
ちゃんと話聞いてんのかー?』





けどこんな調子で

全然気をつかわずに話しかけてくるってことは


やっぱり


ただの幼馴染みとしか思われてないってことか…





当たり前のことなのに

じわじわ痛む胸の奥



ずっと一緒で

こんな近くにおっても



適当に相槌うって

自転車こいでる名前の背中見つめることしかできひん

なんか落ち込むって感情を通り越して呆れるわ…




なんて思っていると





『つーか昨日からずっと変だよな…
マジ何かあった?』

「えっ!?」





突然


走らせていた自転車を止めて

こっちを振り向いた名前


しかも滅多に見せない真面目な顔で

すごく近い距離で見つめてくる




「べっ、別に何も…」

『ウソつけ、目そらしてんじゃねーよ』

「…//」

『なぁ、こっち向けって』





見れるはずないやろ


これ以上

叶わん想いは大きくしたくない



そう言い聞かせて

絶対に目だけは合わせんようにしてたのに





『もしかして……アレのことで悩んでる?』


「えっ…//」






思わず


見つめ返してしまった




ひょっとしたら名前に




この気持ちが…





『太っちゃったから一人称にチャリ運転させるの悪いなぁ…みたいな?』
























「は?」

『実は最近菜緒が後ろに乗ってるとペダルが重くて…(笑)』

「…」





ウソみたいな話


むしろウソであってほしいわ



なんで、

なんでこんなヤツのこと…





「………ぁほ」

『…ほ?』

「名前のアホー!」

『ちょっ…後ろ乗ったまま暴れんな!』

「知らんわそんなん!」

『はぁ!?ちょっ、マジでコケるからやめろ!』
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ