日向坂 (短編)

□未体験ゾーン
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『としちゃん、この後ヒマ?』

「え、どうしたの?」

『観たい映画があってさ、良かったら一緒にどうかなって』

「あー行きたいんだけど…ちょっと用事がありまして」

『そっか…じゃあ、また今度』

「うん、ごめんね?」



















『…』








最近

としちゃんが変だ





いや

変なのは前から変なんだけど





そういう意味じゃなく

様子がおかしいというか





前までは講義終わりで一緒にご飯とか

遊びに行ったりしてたんだけど

ここ何日間かはずっと断られてて




どうやら何かしらの用でどこかへ行ってるみたいだけど

秘密にしてるっていう雰囲気でもないし

避けられてるワケでもないから気にしないでもいいとは思うんだけど




まったく気にならないというワケでもなく





とはいえ後をつけるっていうのは友達としてちょっと気が引けるし…








「普通に聞けばいいじゃないですか、どこ行くの?って」

『それはそうなんだけどさ…』

「名前先輩って変なところ小心者ですよね」

『うるせーな、ほっとけ』


















『って美穂!?』

「あ、こんにちは(笑)」

『いや挨拶の前に!いつからいたんだよ!?』

「えっと…先輩が状況説明し始めたころくらいですかね」

『マジか…』






悩み全部声に出ちゃってたのか

端からみたら危ない人じゃん




っていうか何で美穂がいるんだ?

ここは一人称が通ってる大学の敷地内

しれっと紛れ込んでるけど

もちろんオープンキャンパスなんかじゃないだろうし




色々不思議に思いつつ聞いてみると








「今日はバイト休みなので、先輩に会いに来ました…えへへ//」

『…あ、そう』







なんだ

そんな理由か



とは思いながらも

母校の制服とカーディガン姿を少し懐かしんでいると







「…鈍感だ、相変わらず」

『ん?何か言った?』

「何も言ってません!それよりとしさんどっか行っちゃいますよ?」






そう言われて辺りを見回すと

へにょへにょしている後ろ姿はかなり小さくなっていて



少し迷ったけれど…








『美穂、これから時間ある?』

「えっ…もしかして、デートですか!?」

『なんでそうなるんだよ…じゃなくて一人称が言いたいのは、』

「どうしよう…先輩とデートかぁ…///」

『…』










一人称の声







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