日向坂 (短編)

□ナチュラル
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「それでね、月曜日の夕方によく聞いてるラジオがあるんだけどさ」

『うん』

「ラジオネーム何がいいかなって考えてたんだけど…」

『…うん』

「あかあかあかちゃんってどうかな?」

『……うん、可愛いんじゃないかな』







さっきから

ずっと喋ってる






今日も一日長かった授業が全部終わって

テンション上がってるのかな






その気持ち

分からなくはないんだけど





何でその話を聞かされてるのが





一人称なんだろう








ここは一人称の通う高校の教室

もう放課後になってかなり時間は経過してる



その証拠に教室には一人称たち以外は誰もいないし



夕陽のおかげで明るい教室には

オレンジの光が射し込んでるけど




一人称は帰宅部だから

間違いなくいつもなら自宅に到着しているであろう時間



ここに居座る理由は隣で喋り続けている友人




クラスメイトの丹生明里ちゃん

みんなからは、にぶちゃんって呼ばれてる



今までこういうことってあんまりなかったんだけど

今日は帰ろうとするとなぜか急に呼び止められて








「名前くん、ちょっと話さない?」







って言われて自分の席に座り直したんだけど

これはちょっとじゃないような



にぶちゃんは女子の中でも仲良いほうだし

別に早く帰りたい理由があるワケでもないんだけど









「ねぇねぇ、名前くん」

『ん?』 

「ごめん…私ばっかり喋っちゃって、つまんなかったよね」







やべっ

無理してたつもりはないんだけど

自然にその雰囲気出てたのかな








『そんな…全然つまんなくないよ(笑)』

「…本当?」

『うん、あかあかあかちゃんって名前もインパクトあるし…いいと思う』

「そ…そうかなぁ//」








普段から不思議というか

天然なとこがある丹生ちゃん


咄嗟に出た一人称のフォローも

思いっきり鵜呑みにして照れちゃってるし…






その様子を眺めながらも

きっと純粋でいい子なんだろうなぁって思ったり



なんだかんだでほんわかしてくる

少し肌寒い教室で









「良かった…私てっきりさ、」









彼女がまた唐突に

意味不明なことを言い出した









「美穂と一緒に帰りたかったのかと思ってたから…」
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