日向坂 (短編)

□Maybe Addiction
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学校中にチャイムが鳴り響いて

徐々にざわつき出す教室






見渡さなくても

クラスメイトが放課後の解放感に溢れているのは想像できる







普通はまぁ…







そうなるんだろうけど







一人称にはまだ試練が残っていて

まったく気が抜けない






そんな厳しい現実を受け入れつつ周りを見渡すと






部活なのかバイトなのか



もしくは友人や恋人との待ち合わせか



それともただの暇人か





足早に教室を去ろうとするクラスメイトたち




一人称もその波に乗るように入口へ向かい

おそるおそる廊下に顔をやる













よし









左も




大丈夫













『ふぅ…』









どうやら今日は安心して家に帰れそうだな…











「名前なにしてるん?」










一瞬気を抜いたところで



背後から人の気配




冷や汗が出そうになったけど







この声は彼女じゃない






冷静さを取り戻しつつ






ゆっくりと振り向く











『脅かすなよ、まな……ふぃー』

「あ、ごめん…というか何なんその微妙な間は(笑)」








そこにいたのはクラスメイトの高瀬愛奈


最近仲良くなったんだけど


なかなか彼女の呼び名が一人称の中では定まってなくて






だからたまに高瀬とか愛奈とか

ごく稀にまなふぃーとか



色々しっくりくる呼び方を探ってるところで…








『っと、そんな説明してる暇ないんだった!あの子がくる前に退散しないと…じゃ、また明日!』









慌ててもう一度教室から出ていこうと足を踏み出した時


再び高瀬の不思議そうな声









「もしかしていつものアレ?」

『そうだよ!だから早く帰らないと…』









一人称のこの様子を見ながらも

のんびり口調で話しかけてくる友人の声に疑問を抱く





目をやると




キョトンとした表情の彼女が一人称の席を指さしていて…







そこには





一人称の恐れていた人物が座っていた















「ここが名前センパイの席かぁ」

『…』

『私も一緒に授業受けたいなぁ…絶対に隣の席が良いなぁ…」

『…』










なぜここにいる



というより、いつからいた?









ふぃー「もう遅いみたいですよ、センパイ(笑)」

『…』






隣で笑いながら一人称の肩に手を置いた高瀬




コイツ他人事だと思って…









イラついていたのも束の間

今度は一人称の席に座る彼女に存在がバレてしまったようで…







「あ、セーンパーイ!こっちで喋りましょうよ、二人で!」


『…』







一人称を見つけただけで幸せそうな表情


そして手招き


さらには右目のウインクまで飛んで来てて…








けどそれもそうか







だって彼女にとって一人称は










運命の人らしいから。
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