Pink The Wire (?)

□Loveless Vessel
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AM7:27





「…おっそい」






冷たい風が吹く冬の朝

いつも待ち合わせてる公園のブランコに座って

弁当を片手に待ちぼうけの私



ちなみに私の弁当はカバンの中

これは待ってるアイツの分





「…はぁ」





さっさと来てくれないと

私まで遅刻しそうなんだけど…





















『理佐』





なんて思い始めたところで

ようやく現れた





「…遅すぎ」





マイペースに駆けよってくる

金色の髪と見慣れた顔





「ホントにさぁ、いい加減にしてほしいんだけど…」





こいつは名前

私と同い年の幼馴染み





『悪い、ちょっと遅れた』





柄も悪いし愛想もないけど

悪いやつではなくて





「わざわざ言わなくても分かってるから…」





親同士も仲が良いから

もはや親戚みたいな間柄…



いや

むしろ手のかかる弟かな…





「次、遅れたら罰金ね」

『マジかよ…ちなみにいくら?』

「一万円」

『高っ!』





だけど3カ月前

名前の両親が仕事の都合で引っ越してしまい…



家族会議の結果

名前は高校を卒業するまで一人暮らしをすることになったらしく…





『で?今日の弁当どんな感じ?』

「別にいつも通りだけど…」





こうやって喋っていると

何も変わってないように感じるけど

一人はやっぱり大変だろうから…





『とか言いつつ案外豪華だったりしてな(笑)』

「ハードル上げなくていいから…」





そう思って作り始めた

二人分の弁当



もともと自分のを作ってたから

そんなに手間でもなかったし



小さい頃から知ってるってこともあって

ほっとけないっていうか…





『とにかく弁当サンキュー』

「あ、ちょっと!」





そんな経緯と

過去を回想している隙に





『今度なんか奢るからさー』





私の手から弁当を奪うと

いたずら顔で走り去っていった名前





「…最悪」





だけど

これが私たち



お節介な私と

世話の焼ける名前





「…ばーか」





今のように

高校が別々になってからも



たとえ

離れ離れになったって





















「…さてと、」





全部

いつもどおり

何も変わらない



そんな答えを掲げて消して

一歩踏み出そうとした時





「…?」





ぼんやりとだけど

人の気配を感じて



辺りを見渡すと

唯一確認できたのは



かなり離れた場所にいた

見覚えのない女子高生の後ろ姿で





















「…気のせいかな」





そんな楽観的納得を手に入れて

多少の違和感を捨てた私は



止まっていた時間を

そっと奪い返すように



少し足早に

通学路を歩き始めた。
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