Pink The Wire (?)

□Silence is Louder
1ページ/5ページ












あれから

1時間くらい経って





『ただいまー!』





掴まれた手は

無抵抗のまま





「…//」





陽も沈みきった頃

方向音痴ふたりで

ようやくたどり着いたのは





『由依さーん!』

「…」





見慣れた風景と

半日ぶりな扉の前





『一人称帰って来たよー!ついでにひかるもー!』





さらにどういうわけか

我が家に帰ってきた報告も

出会って数日な彼の役目になってるし





「…ついではそっちでしょ」





こんなシンプルなツッコミも

きっと届いてないだろうとは思いつつ





「…//」





繋いだ手にそわそわしながら

並んで待つこと数秒










ガチャ…










ゆい「おかえり」





まるで彼の冗談が

冗談にならないくらいの早さで

さほど間もなく招き入れる姉





『おじゃましまーす!』





さらに隣にいたはずの彼も

しれっと手を放したかと思えば

すんなり玄関をすり抜けて





「…」





















「…はぁ」





改めて

ここ数日間の

おかしなことだらけを痛感





『いやーめちゃくちゃ歩きましたよ、ホントに…(笑)』

ゆい「確かにちょっと遅かったね…何かあった?」

『実は帰り道で迷子になりまして(笑)』

ゆい「…なぜ?」





なんて落ち込む隙もないまま

会話と共にリビングへ向かう二人





『でも駄菓子屋でおみやげ買って来ました!』

ゆい「おっ、やるじゃん(笑)」





後ろで聞いてるだけだった私は

完全に乗り遅れてたんだけど





『何系たべます?いっぱいありますよ!』

ゆい「じゃあ…チョコかな」

『あ、やっぱり!」

ゆい「やっぱりって?」

「…」





近くて遠い場所で

隙間もないまま微笑む

彼の表情を眺めて思う





『ひかるに由依さんが好きそうなの聞いたらチョコだって言ってたんで!』

ゆい「まぁ、私チョコばっかり食べてるからね…(笑)」





なんというか

苗字くんって





「…」





お姉ちゃんみたいな人が

好きなのかな…





『でも喜んでくれて良かった!教えてくれてありがとな!』





そういえば初めて会った時も

可愛いとか言ってたっけ…





ゆい「…ひかる?」





まぁ…

高2にしては大人びてると思うけど…





ゆい「…どうした?」





でも意外と抜けてるし

ちょくちょく甘えてきたりもするし…



そういうベタなギャップが

苗字くんには魅力的だったりするのかな…





















って…

また変なこと考えてるし…





「……なんで…?」





いいじゃん

苗字くんが誰を好きでも





「…」





そんなこと

知ってもしょうがないし





「…はぁ」





私には

関係ないことだし…





『ひかるー!?』

「うぉぉっ!?」





なんて自問自答が始まった直後

いつの間にか苗字くんが目の前にいて

至近距離で顔を覗きこんでて…





「なな…っ、なにしてんの…//」

『反応ないから寝てんのかなーと思って(笑)』





さっきまで抱いていた疑問も

一気に吹き飛ばされるくらいに

鼓動が音を立てて主張してくる





「た…立ったまま寝るわけないから…//」

ゆい「でもさ…前に27時間くらい寝た時あったよね?」

『マジすか!?人ってそんなに寝れるもんなの!?つーかひかるって目おっきくね!?』

「ちょっ、その前に離れて欲しいんですけども…//」





相変わらずの距離感で

ああでもないこうでもないって話すから

またさらに胸の奥がうるさくて…





「…ん?」





そんな落ち着かない状況の中

微かに揺れたような気がする

制服の奥に気を取られていると





『ん?』





興味津々で

追撃してくるのかと思っていた苗字くんも

どういうわけか同じリアクション



ポケットへ手を突っ込む姿を横目に

私も自分のスマホに手を伸ばしてみると





ゆい「どうしたの、ふたり揃って」

「まりなからメッセージが…」

『一人称も保乃から連絡が…』





お互い

画面を眺めて呟いて





ゆい「それで用件は?」

「次の日曜日…まりなと私と…」

『一人称と保乃で遊園地に行かないかって…』





僅かな時差と違和感は

あっという間に一体感へ変わって





『…』

「…」





















「らしい…ですけども」

『…うん』





ちょっとだけ

真っ直ぐみつめた先には





















『じゃあ…行くか、遊園地(笑)』

「…そう……だね(笑)」





不透明で

ぎこちない約束と

微笑みが待ち伏せていた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ