センチメンタルモーメント (長編)

□夢心地ジェラシー
1ページ/10ページ

SIDE : 苗字名前










AM8:20

白石のスマホ紛失事件(?)の翌日

いつも通りの時間帯に

学校へ登校中の一人称





『…ねっむい』





今は鮨詰め状態の密室に揺られながら

立ったままで睡魔と戦ってる



両親は海外で仕事をしてて

起こしてくれる人もいないから



毎日毎日

枕元のスマホと目覚まし時計をダブルでセットして

眠い目を擦りながら支度をして…



とにかく高校入学と同時に始まった一人暮らしも

かれこれ1年以上は経過してるけど

相変わらず朝はキツい…





『…そういえば、』





あの後

大丈夫だったかな、白石



放課後の教室で

恋をしてるって聞かされて

応援することを伝えたら何かボーっとしてたんだよな…



昨日の一件が起こるまでは

そんなに話したこともなかったから

前のめり気味な一人称のテンションに引いてたのかも…





けどあの時は泣いてたし

スマホのこともあったから

お詫びついでに力にもなれたらって思って…



ケータイを手渡した時は

ぎこちないながらも一応笑顔だったし

多分大丈夫だと思うけど…





『ぁ…降りなきゃ』





そんな昨日の出来事を楽観的に振り返りながら

ラッシュアワーの満員電車を飛び出して



同じような服を着て

同じような顔をした



人の波をすり抜けるように

学校へ向かって歩いていると







「名前!」

『…ん?』





後ろから聞こえてた

耳馴染みのある声



振り向くと数メートル先から

クラスメイトが駆け足で近づいてきてて





『おー、西野おはよ』

「っ…はぁ…おはよ…(笑)」





一人称の真横へ到着したと同時に

呼吸を整えながら、右手で前髪を淡く触った彼女



この子が昨日生駒と話してた

西野七瀬って名前の同級生で





『急がなくても止まってるからゆっくり来ればいいのに(笑)』

「でも名前が前におるって気づいたら…何でか分からんけど行かなあかんって思って…」





















「ぁ……いきなりごめん、うるさくて…//」

『いや、全然大丈夫だけど…(笑)』

「ちょっと…その、まさか会うと思ってなくてびっくりして…//」





現れたかと思えば

何やら一人であれこれ喋ってて



その姿が妙に不思議で面白くて

しばらく黙って見ていると





「なぁ……なな顔赤くない?」





なんて聞いてくる西野

まぁ、小走りでここまで駆けてきたわけだし

そんなが気もしなくもない…

って心の中では思ったんだけど




「…//」





なぜかほんの少し

恥ずかしそうにしてたから

別に普通だよって伝えてはみたけど…





そういえば生駒のやつ

何か変なこと言ってたな



西野が一人称のこと気にしてるとかどうとか…



でも見た感じ喋り方とか

雰囲気はいつも通りなんだよな



基本的には落ち着いてるし

未だに少し顔が赤いのは

さっきの小走りのせいだろうし



やっぱりアイツの勘は当たんないな…



ある意味いつも通りのオチに

ちょっと安心していると





「あのさ…さっき駅前に鳩おったんやけど見た?」





今度はいきなり

鳩の話を始めた西野



そういえば鳩好きなんだっけ?

前に学校の中庭に大群がいただけでテンション上がってたし…





『見てないけど…その鳩がどうかした?』

「いっぱいおったから朝ごはんあげようと思ってコンビニでパン買うてんけど……戻ってきたら一匹もおらんなってて(笑)」

『マジか…(笑)でもそんな落ち込んでる感じもしないね?割と元気というか』





そんな疑問と感想を返すと

彼女は少し照れたように笑って





「うん…エサあげれんかったのは残念やったけど、その後に嬉しいこともあったから…//」





そう呟くと

さっと視線は外されて





『そ…っか』

「…うん//」

『…?』





尻すぼむ会話と共に

追った先の横顔は微笑んでて





『…』

「…」





それにつられるように

流れる空気は微睡むようで…










って待てよ?

ここって駅から徒歩2~3分くらいの距離だよな?

そんな僅かな時間に起こりうるそれらしいことって何だ…?



さすがにちょっと気になってきたから

自然にしれっと聞き出そうとしたんだけど





「まぁ、何があったかは…内緒やけど(笑)」





って先手取られて聞けず仕舞い

おまけにどこかいたずらっぽい笑顔で…





まぁ…



いいけどさ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ