アイドル部って、なに? (長編)
□ORDINARY WORLD
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ふれあいコンサートから1週間後
AM 9:06
『…』
目覚ましが鳴る前に起きてしまった日曜日
もちろん学校も
ありがたいことに部活も休み
いつもならもう少し寝てしまおうかとも思う時間帯だけど
『…起きなきゃだよなぁ』
今日は特別
ふれあいコンサートでMVPに選ばれたあの人の願い
それを叶えるべく開かない目をこすりながら
普段は使わないクローゼットを開いた
AM 10:30
いつもと同じ電車に乗り込み
乃奇坂にある待ち合わせ場所に向かうその道中
休日のせいで混みまくってる電車に加えて
未だに慣れないオシャレな街並みに
自分が浮いてる気がしてソワソワしちゃうけれど
きっと浮いてるのは定まらない目線のほうで…
やっぱり
まだまだ都会には慣れない
『ここか…』
しばらく歩くと見えてきたそれらしきお店
スイーツ食べ放題で有名みたいなんだけど
ついこの間まで田舎に住んでた一人称がそんなこと知るはずもなく…
ザ・都会って感じの派手な外観に
若干ビビりながら近づいていくと
『やべっ…もう来てんじゃん』
その店のガラス越しに映ったのは
窓際の席に座るあの人で
遅刻してはいないことを確認しつつも
早足で店内へ滑り込む
「あ、ここだよー」
中に入るとすぐに手を振ってくれた彼女
周りの視線に少し恥ずかしさが沸いたけど
待たせてたかもって申し訳なさがそれを掻き消して
あっという間にそこへたどり着いた
『すいません、待ちました?』
「全然、いま来たところだから!それより早く座って?ケーキいっぱい食べるために昨日の夜から楽しみにしてたんだよー!」
この雰囲気
本当にさっき来たっぽいな
まだ何も注文とかしてないみたいだし
つーか昨日の夜からって…
「んー、どれにしようかなぁ…名前はもう決めた?」
『まだメニュー見てないっす』
「あ、そっか…何かテンション高くてごめん(笑)」
『いえ…』
気まずくないのもそのおかげだし
にしても相当お腹減ってるんだな
目がキラキラというか…
ギラギラしてる
そういえばアイドル部の人と二人で会うのって初めてだな…
当然一人称も彼女も今日は私服で
ジャージ着てないといつもと違う感じがしてどこかぎこちない感じもして
それに…
『あの…ひとつ聞きたいんですけど』
「どうしたの?」
白石さんでも西野さんでもなく
なんでこの人に誘われたのかが分からない
『何で…一人称のこと誘ってくれたんですか?』
『…生田さん』