ななせまるの憂鬱 (中編)

□君の事が
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七瀬が




フランスに留学する





そんなウソみたいな話を朝っぱらから




一人称の家の玄関で



汗だくで




真面目な顔して叫んだ若月




当然ながら状況は飲み込めてなくて








『ひとまず落ち着けよ…あ、なんか飲んでく?』

「だから…っ、そんな時間ないんだって!
あと少しで飛行機も出ちゃうし!」

『飛行機?』








マジで何なのこれ

新種のドッキリ?





それにしては演技がリアルすぎる

得意の顔芸にもまったく余裕がない






『てか…昨日海に遊びに行ったばっかだぞ?
その時にはそんなこと言ってなかったし…』








様子は…




少しどころじゃないくらいおかしかったけど




思い返すと

またよみがえってくるあのシーン





するとその謎がさらに深まるような

意味の分からないことを言い始めた









「留学のことは…昨日の帰り道に聞かされたんだけど」

『…』

「名前だけには内緒しておいてって言われたんだ」

『え…?』

「もちろん玲香も、生駒も知ってる」

『ちょ、ちょっと待て!』








やっぱり意味分かんねぇ


仮にそれが本当だったとして

何で3人には教えて一人称には内緒なんだ?






何で七瀬は…










『今…どこにいる?』

「家にはいないよ、もう空港に向かってる頃だから」

『…』

「携帯も多分出ないと思う」

『…』









やばい

頭が回んない








「とにかく詳しいことは行きながら話すから、早く仕度して!」









急かされた勢いで

頭とは裏腹に動く体



その間思い浮かぶのは



昨日の別れ際



未だに分かんないことだらけだけど




唯一はっきりしてるのは





会いたいって気持ちだけ。
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