乃木坂 (短編)

□7TIMES OF REVELATION
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秋元真夏



優里の口から出てきたその子こそ

昨日の夜遅くまで連絡を取り合っていた学校の友人で


ちょっと変わってるけど可愛らしくて面白いし

ついついかまってしまいたくなる存在であることは間違いない




ただ…





『いや、付き合ってないけど…てか急にどうしたの?』

優里「とぼけてもムダなんだよぉ!この前二人でカラオケ行ってたの見たって子がいるんだからなー!」





歩いていた足をわざわざ止めてまで

一人称を指さしながら問い詰めてくる優里



確かにカラオケは行ったけど歌が下手だって言うから特訓についていっただけだし

女の子と二人で遊んだくらいで付き合ってるとか中学生じゃないんだからさ…



なんて軽く笑い飛ばそうと思ったんだけど





らりん「あたしもその噂聞いたー!しかも夜遅くに家まで行ったらしいじゃん!」





どこから出回ったのか

今度はらりんが仕入れた誇張気味の情報まで聞こえてきたからそうもいかなくて





『それは帰るの遅くなって暗かったし、何かあると危ないから家まで送っただけで…』

優里「そもそも名前って色んな女子と仲良すぎじゃない?いつ知り合ったの?みたいな子ともよく遊んでるしさぁ」

らりん「確かにー!」

『それは友達の紹介とか色々あって、そこから二人で遊ぼっか?みたいな流れになっただけで…』

らりん「うわー、何かチャラくない?」

優里「ちょっとモテるからって調子のっちゃってー(笑)」

『違うって!全然チャラくないし、モテてもないから!』





なんなんだこの二人?

今朝はやけにうるさいし絡んでくるな…




今度は一人称みたいな男は彼氏にしたくないとかなんとか共感しあってるし


確かに女友達が多いのは認めるけど特別な子とかはいないし

基本的にめんどくさがりだからこっちから誘ったことは一度もないんだけど…




とかって説明したら余計に騒ぐだけか





『もういいよ…一人称先に学校行くからなー!なーちゃんも行こ?』





とりあえず悪ノリしてる二人は放っておいて

こんな話題には興味なさそうな友人に目をやったんだけど





七瀬「…」

『なーちゃん?』





なぜか元気なさそう

さっきまで笑ってたよな?





『どうかした?』

七瀬「…女の子と、よく遊ぶん?」

『えっ、』

七瀬「家まで行ったりとか…」






うわ…

さっきの話聞こえてたのか

なぁちゃんにまで変な勘違いされると困るし一応誤解は解いておかないと




『いや…確かに遊ぶこともあるけど友達としてだよ?なぁちゃんとか、優里やらりんと遊ぶのと一緒でさ』

七瀬「ななと一緒?」

『うん、みんな普通の友達だから』

七瀬「とも…だち…」





おそらく伝わったであろう弁解の言葉

にもかかわらず未だに浮かない表情のなぁちゃん





七瀬「そっか…友達、やんな……」





その歯切れの悪い言葉をうつ向きながら呟いたと思ったら

今度は突然一人称を置き去りに学校への道を歩いて行こうとし始めて…





『あ…ちょっと待って、』





様子がおかしなままで動き出したことに焦りながらも

とにかく追いかけないとって思いから手を掴んだんだけど…






七瀬「離して…」

『え?』






必死で引き止めたその手はあっさりと振り払われて

同時に生まれた気まずさの中を流れる朝の冷たい空気





七瀬「…」

『あっ…ご、ごめ……』





何を謝ろうとしているのか

自分でもよく分からないままに立ち尽くしていると



睨むような視線と冷たい言葉が

混乱している一人称の頭に流れ込んできた





七瀬「名前なんか……もう知らんっ、」






そしてそれだけ言い残すと

なぁちゃんは一人称から離れていった


















『…』





言葉が出なかった



きっと去り際の

少し潤んでた目に戸惑ったせい



そんな中ただひとつハッキリしてるのは

なぁちゃんが何かに対して怒ってたってこと…





だけど怒ってる理由が何なのかまったく分からない一人称にしてみると

急に冷たくあしらわれた衝撃はハンパじゃなくて



おかげで引き留めるためにもう一度声をかけるとか

追いかけるって選択肢も出てこなくて

離れていく華奢な背中をただ見送るだけしかできず…





そしてその影響からか足は思うように進まなくなって

一人称をネタにふざけてた優里とらりんに腕を無理矢理引っ張られるハメになり

3人共が遅刻ギリギリで学校に滑り込んだこのドタバタな朝を境に




一人称となぁちゃんの関係が崩れ始めた…
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