Labyrinth to Rain (長編)

□傘をさがして
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雨の中





過ぎていく単調な一日と

学校から放たれる時間帯







白石「名前、今日どうする?」






それと共に一人称の席にやって来たのは

数少ない友人の白石と橋本



いつも通り制服ではなく

ライダースのジャケットを着て

一人称の机を囲む髪色も明るい二人組


この見た目の派手さから校内では不良扱いされているらしい


関わってみると全然普通だし

気さくで優しいクラスメイトなんだけど







『どうするって?』

橋本「いつもの店、寄って帰ろっか?」

『あぁ…』






言われて浮かんだのは

よく3人で通うあのカフェ



確かに毎日のように寄り道してるけど




止まない雨のせいで

憂鬱な気分






『今日はいいや…あいつも休みだし』

白石「そうなんだ?まちゅはバイトって言ってたけど」

橋本「シフトかぶってない日もあるんじゃない?」

『…じゃあ、悪いけど先帰るよ』





そそくさと支度をして立ち上がり

二人に背を向ける




急いでるワケでも


もちろん彼らが嫌いなワケでもない





ただ今日は


ひとりでいたい







白石「名前、ちょっと変じゃね?」

橋本「変なのは初めて会った時から変だったよ(笑)」

白「それは…まぁ、うん」

橋本「…また明日誘ってみようよ」














予報通り

降り続いている雨




駅の改札を抜けると

見えてきたのは傘を咲かせる人だかり

その数だけ出てくるため息と共に


出口までゆっくり歩を進める







『いつか止むのかなぁ…』








誰にも聞こえない

小さな声で呟いた




沈んでいく希望




徐々に広がる見慣れた景色は

いつも通りの悲しい色をしてて








『…』








雨の音が

大きくなった気がした







そんな時










「うおっ…やっぱダメだー」








すぐ傍で聞こえてきた

雨音をかきけした唸り声



目をやるとそこにいたのは






「そうだよね…人の傘とっちゃうのはよくない!」








そこそこのボリュームで

難しそうな顔をして

ひとりごとを交わしてる女の子




見た感じ多分同い年くらい

どっかで見たことある制服着てるし



どうやら目の前に立て掛けてある

誰のか分からない傘を見て葛藤しているようで








「んー」








手を伸ばそうとして








「いやっ、やっぱだめだ!」









また引っ込めたり…






「けどこのままじゃピアノ教室遅れちゃうよー!
とはいえズブ濡れで行ったりしたら失礼だし迷惑かかっちゃうし…」


『…』


「連絡しようにも携帯と財布は家に置いてきちゃったんだよなぁ…」


『…』







変な人

誰が見てもそう思うであろう彼女の言動


今の話だとかなり天然なのか忘れっぽいのか


とにかく変な人


普段ならまず間違いなくスルー

存在が確認できた瞬間から距離を取りたくなるタイプ




今だって足は彼女と反対方向に進もうとしてて…










『…』









なのに

今日はおかしい




困った顔から目が離せない

足もこれ以上動こうとしない


人の心配なんてする余裕はないはずなのに








『…』








意外と悩んだ時間は短くて


気がついた時には差し出してた










『これ…使います?』









透明な色をした

たったひとつの傘を。
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