Labyrinth to Rain (長編)

□想ひ出喫茶
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『…というワケで、知り合ったのがここにいる生田さん』

「はじめまして」



「「こ、こんにちは…」」






思いもよらないタイミングで

出会ってしまった友人2人


しょうがないから傘の件と

彼女と一緒にいた経緯を説明するためにいつものカフェに入り込んだんだけど







「なんか二人ともスパイみたいな格好してる」

白石「スパイ?」

『気にしないで、多分誉めてるから』

橋本「そんな誉め言葉聞いたことないよ(笑)」






ここでも生田さんは天然パワー発揮

けど雰囲気もそんなに悪い感じじゃないし

二人が思った以上に受け入れてくれてるから助かった…





なんて思っていると









白石「けどいいのかよ、名前」

『ん?』

白石「あいつが知ったら拗ねちゃうぞ」






目線をカウンターの奥にやりつつそんなことをボヤいた白石

そこにはこっちをチラチラ見ている一人の店員がいて







『別に…そういうのじゃないんだけど』

橋本「意外と気にしてるかもよ?」





四人がけの向かいに座る二人がやけに煽ってきて

そんなに生田さんとの出来事がヤバいことなのかと考えていると







「コーヒーお待たせしましたー」







そんなことは関係なしの呑気なテンションで

いつも通りのメニューを運んできた一人の店員






白石「ありがとー、まちゅ!」

「全然平気やで!白石くんのためやもーん」

白石「まちゅー///」

「白石くーん///」





「『…』」






レトロなこの店の雰囲気とは違い

明らかに浮いてるイマドキな二人の絡み


あの生田さんでさえ

とにかく驚いてますって顔で聞いてくる






「ねぇ…この店員さん知り合い?」

『一応ね』







名前は松村沙友理

一人称たちとは別の高校に通っている女子高生


明らかに浮いてる年齢層の一人称たちが頻繁に通うようになったのも


たまたま入ったこの店で白石と彼女が仲良くなったのがきっかけ


お互い人見知りなのになぜか意気投合して

そこからは一人称や橋本も付き合わされるようになり…







『で、今に至るって感じ』

「そうなんだ…すごい人来ちゃったなって思って(笑)」

橋本「ごめんね、驚かせて(笑)」






未だに騒いでる二人を横目に

とりあえず知り合いとして謝っていると









「まっつんミルク忘れてるよ…」







少し申し訳なさそうに

さりげなく同僚のフォローに現れた見慣れた顔





まちゅ「おー、なーちゃんサンキュー!
でも白石くんブラックやったよな?」

『一人称が使うんだよ、苦いの飲めないから』

橋本「それいっつも言ってる…(笑)」






本当こいつは白石以外目に入ってないというか…

よくこれでバイト勤まってるよな

加えて橋本めっちゃ笑ってるし




って、そんなことより。







『ごめん七瀬ちゃん、いつもミルク持ってきてもらって』

「そんなそんな…全然大丈夫」






隣に初対面の生田さんがいるからなのか

ぎこちない笑顔でそう答える彼女



名前は西野七瀬

松村と同じくカフェのバイトをしてる女子高生


彼女もかなりの人見知りで

知り合った頃はそんなに喋ったりしてなかったんだけど

白石と松村の絡みに呆れたり笑ったりしてたらいつの間にか仲良くなってたっけ…




何でもないようなきっかけを懐かしんでいると

隣でぼんやり七瀬ちゃんの顔を見つめる生田さんに気がついた








『どうしたの?』

生田「すごく可愛い人だなって」

なな「いやいや…そんなことないです、全然//」





まちゅ「え、まちゅのこと?」





「「『…』」」





白石「そうだよ、まちゅのこと可愛いって言ってたの!」

松村「えぇー、白石くんに言われたらめっちゃ照れるー///」
















これ毎回見てるけど…


疲れる。






あ、




『そういえば…あいつ何でこっちこないの?』

なな「なんでやろ…お店混んでるわけやないのに」

「あいつって?」





このメンバーの中で彼女の存在を唯一知らない生田さんの質問

それに答えようとした時







橋本「やっぱ気にしてるんじゃない?」






橋本の呟きがやけに大きく聞こえて

冗談に思えなくなってきた








『…行ったほうがいい?』

橋本「かもね」

『…』






あまり気がのらない

というより行ったところで何を言えばいいのか分からないけれど


とりあえず席を立って店の奥へ進む



その間こっちからも向こうからも丸見えなのに

未だに気づかないフリをしてる店員



けど付き合いの長さはそれをはねのけて

拗ねた横顔にまっすぐ声をかけた









『なにやってんだよ…玲香』
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