Labyrinth to Rain (長編)

□幻滅メゾピアノ
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『…』

「な…なんですか」








見慣れた角度

だけど前とは違う座り位置で

かつ一人称の隣ではなく

白石の隣に座った彼女






『やっぱ変だなと思って』

「だから!いつも通りだってば//」





別に気にするほどのことじゃないのはわかってるけど

相変わらず様子がおかしい



で、

なぜかそれが気になってる一人称もおかしいんだけど…







白石「いくちゃんなに飲む?」

「じゃあ…オレンジジュースを」

『あ、一人称も』

「えっ!?」

『…なに』

「いやっ、そうなんだと思って…」

『…』





何なんだ、本当に。




表現しづらいもやもやを抱えたままでいると






まちゅ「おー、いくちゃん久しぶりやん!」

れいか「…いらっしゃいませ」






奥から現れたテンション真逆な松村と玲香


こっちはこっちで相変わらずというか…



そういえば前もこんな流れで玲香の機嫌悪かったし

念のため先手打っとくか




『やっぱ一人称コーヒー。
へたっぴの玲香が淹れた苦いやつで』

「ちょ…全然苦くないから(笑)
てかそれ昔の話じゃん!」

『今でも苦い時あるよ』

「えぇー!?じゃあその時に言ってくれればさぁ…」





どうなるかと思いつつも

話しかけてみたら意外といつも通りに明るくて


この間のしかめっ面に深い意味はなかったのかな…


ほんの少しだけ漂う違和感は残しつつも安心していると







「え…っと、」








相変わらず様子のおかしい生田さんが

一人称たちを見ながらぼやくように呟いた







「苗字くんと玲香ちゃんって……付き合ってるんですよね」

















質問内容のせいなのか

生田さんの独特な聞き方のせいかは分からないけど

一瞬静まった空間








『そうだけど…なんで?』








そういえばこの前の帰り道にそんな話したっけ

でもなんでまたその話?

聞き返そうとすると白石と松村が共感しはじめて




白石「やっぱ意外なんだよ、この二人が付き合ってるのが」

まちゅ「そうやねん!あんまりカップルっぽくないというか…」




れいか「…名前がみんなの前でデレないからだよ、絶対」

『いや、デレたこととかないから』




おまけに少しむくれた顔の玲香まで意味不明なことを言い出して

もちろん覚えのない一人称は否定したんだけど






れいか「あったよぉ!ほら、こないだの大雨の日にさぁ…//」






どうやら生田さんと出会った雨の日のことを思い出したみたいで

にやけ顔に変わったと同時に


一人称もずぶ濡れで会いにいったことと

勢いで交わしたあれを思い出して







『…それ以上言うなよ、絶対//』

「なんでー!いいじゃん///」


白石「おっ、珍しくイチャついてる(笑)」

まちゅ「何あったんかめっちゃ気になるやーん//」






最悪の展開

この二人もいつもの仕返しとばかりに煽ってきてるし


何か違う話題にもっていかきゃ…








「…」








そんな時ふと目に入った

話を振った張本人


なぜかこのテーブルでたったひとりだけ笑ってなくて



少し気にはなりつつも

一人称の頭はあれこれ聞いてくる二人の質問をかわすことに意識が向いてしまい







『そっちこそどうなんだよ、付き合ってんの?』

まちゅ「そんなん決まってるやん!ねー、白石くんっ///」

白石「俺らバカップルだもんねー///」

『…』







振る話題を間違ったとは思いつつも

とりあえず自他共に認めるバカップルの絡みを眺めていると








「あの…」








ふいに

席を立った生田さん







『どうしたの?』

「用事思い出したので…帰ります」




















『…は?』

「さよならっ!」







早口でそう告げると

足早に店を去った彼女



もちろん全員がポカーンとしてて

何が起こったのか分からないって感じだったんだけど







まちゅ「オレンジジュースどうすんねやろ…」

白石「こっそり飲んじゃえばいいんじゃね(笑)」





空気を濁らせないようにと気づかってか

二人の冗談めいた会話が始まった







れいか「あ、そうそう!今度の日曜なんだけどさぁ…」






さらには玲香まで滅多に会わない休日の話題を提供してきて


いつもと同じようで違う空気




そのせいで余計気になる

さっきのさよならに



体は反応しそうになってる







れいか「名前聞いてる?」

『あぁ…えっと、日曜?』





おまけに斜め上から見下ろしてる

拗ねた顔に気づくのも遅くて



なのに今はフォローに尽くそうって気持ちよりも






『なんかあったのかな、生田さん』

まちゅ「お腹すいたんちゃう?」

白石「それはないと思うけど…(笑)」

れいか「…」

『…ちょっと行ってくる』





探り気味な会話もそこそこに

窓の向こうへ目をやりながら席を立ったところで








「ダメ!」











店に響くほどの大きな声で




ストップがかかった。
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