Labyrinth to Rain (長編)
□ALONE
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きっと普段なら
子どもたちが走り回っている時間帯
そして良くも悪くも気が散るはずで
だけど降りだしそうな雨のせいで人はいない
ただ隣に
諦めたような顔をした君がいるだけ
嫌な予感は当たっていたと
つくづく感じる
「生田さんに初めて会った時から…
本当はもっと前から思ってたんだけどね」
『…』
「私って名前の何なのかなって」
そしてあの日から
時間が戻らないことを知ってる一人称は
どもりながらも繋がりを保とうとするけれど
『何って…彼女だろ。
それに生田さんは関係ないって』
「でも名前が優先したのは私じゃなかった」
『あれは、だから……』
…
「……最近ね、色々…今までのこととかも考えたんだけど」
近づく終わりを感じる
「本当はもっと甘えたくて、もっと会いたかったけど我慢してた……嫌われたくなかったから」
かける言葉も見つからない
「でも…名前は違うって分かった」
君の深刻に気づけなかった##NAME3#には
その資格すらないから
「名前はきっと…一人で平気な人なんだね」
そしてあの日から
泣かないと決めた一人称を見た色んな人に
何度も言われたその言葉が胸に刺さる
弱い自分を誰にも見せたくなくて
認めるのが怖くて
聞き流してたのに
聞き飽きたはずなのに
「私にはそれが耐えられない…」
目の前で起こる現実をしまいこめずに
一方的な会話も終わるころ
「ごめんね…」
届いたのは
うつむいた鼻声とさよなら
湿った色の空から落ちる雨粒が
公園の土に滲んでいくけれど
一人称を守ってくれるはずの
手元にあったはずの傘は
強まる雨に霞んで消えて
そして
見えなくなる頃
ようやく気づいた
傘はいつの間にか
折れていたんだと…