欅坂 (短編)

□星空
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「ねぇ、この前のテストどうだったの?」

『今回は割と良かった!赤点2教科に抑えたから』

「…名前って勉強できないんだ」

『そういうねるはどうなんだよ』

「私は…名前よりは賢いかなぁって感じ」

『おい、ふざけんな(笑)』






名前と出会って一週間




この通学時間は

私の一日のバロメーターになりつつある


今日みたいに朝から会えれば

それだけで楽しくて

学校でも自然体でいられる



もし会えなくても

帰りのバスで一緒になれば

それだけで一日楽しかったと思えたり




今は緊張とかもなくて


交わす言葉は普通の友達同士のもので


通学が楽しくてしょうがない



だからこそなのか


時が過ぎるのはとても早くて


いつの間にか彼が降りるバス停に到着していた




『じゃ、行ってくるわ』

「いってらっしゃーい」




去っていく後ろ姿

言葉を添えて小さく手をふると

爽やか笑顔で返されて





「…//」





キュンとしてしまった





というか

出会ったあの日からなんとなく気づいてはいる


たぶん私は名前のこと…




そんな想いとはうらはらに

バスは走り出して

窓越しの背中はどんどん遠くなる





そして見えなくなるまで見送って




控えめに願う





また放課後

会えるといいなぁ















メイク濃ゆくないかな


大丈夫かな


朝とは向きを変えて動くバスの中


鏡を取り出してチェックする



次は


名前がいつも乗ってくる場所だから



確認取ってないし

絶対会えるってワケじゃないけど




ちょっとでもねるのこと


いいなって


思ってくれたら嬉しい






アナウンスが聞こえた

あっという間にそのバス停



チラチラと

でも不自然じゃないように

入り口に目をやる





何人か降りては

入ってくる制服姿の学生達




その中に見えた


彼の姿




嬉しいのがバレないように

平静を装う





『おっ、また一緒じゃん』




視線が重なって

気づいた彼が近づいてきて



言葉を返そうとした






その時









「何が一緒なの?」








名前のすぐ後ろ

一緒に乗り込んできた女子高生が

そう言い放った




『ん?友達が乗ってたからさ、また朝と一緒じゃんって』

「そうなんだ…っていうかちょっと、そんな話聞いてない!」

『うん、言ってない』

「なんで教えてくれないのー!?」

『うるせーな(笑)てかここ、空いてるから座んなよ』




しかも名前の腕にしがみついて

甘えん坊のように顔を見上げてる



それを軽くあしらってるけど

私の向かい側の空席に気づいて

座るように促す名前




見たことのない光景に

戸惑いを隠せないまま




バスはゆっくりと走り出した。
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