欅坂 (短編)

□The Inside War
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そして迎えた翌日の昼休み


昨日から寄り付いたままの不安を必死に払いのけつつ


小林さんのいる教室をこっそり廊下から覗く一人称と織田



「うわぁ、やっぱカワイイなーゆいぽん///」

『うん…間違いないね///』












『それより作戦は?』


「あ、忘れてた(笑)
それじゃ今から実行に移るよ」

『…』




忘れてたって…

頼んだ一人称が言うのもなんだけど本当に大丈夫なのかな




『…で、作戦はどんな感じ?』

「まず重要なのは場所だね。
周りに人がいないほうが名前も緊張しないで告れるじゃん?」

『うん、確かに』

「けどゆいぽんが一人になるタイミングを見計らってたら呼び出すとか絶対できないから…」




そう言いながらもう一度教室の中を覗くと

小林さんの向かいの席には友達らしきショートカットの人がいて、

さすがに距離ありすぎて何喋ってるか聞こえないけど、楽しそうな雰囲気。


あの空気壊して告白に持っていくとなると難しそうだけど…



『それで、具体的にはどうすんの?』

「…」



















「どうする、名前」

『…』















『はぁ!?
どうする、じゃねーよ!!
昨日あれだけ頼んだのに何でノープランなわけ!?』

「ホントごめん!けど告白オッケーもらえそうな作戦なんて思いつかなくてさぁ…」


『マジかよ…』




悪い予感が見事に的中

完全に頼む相手を見誤った


というか他に宛なんてないんだけどまさかノープランとは…


そこら辺のことを全部任せきってた今の一人称は完全に丸腰状態。


どうやって告ろうかなんてシュミレーションも勿論やってないし

そんなの想像しただけで足がすくんでくる




どうしよう


ほんとに困った






「でもね、聞いて?
実際に告るのは私じゃなくて名前なわけじゃん?
だから作戦考えててもイマイチ気持ちノッてこなくて…」




放心状態の一人称の耳に

遠くでこだまする織田の言い訳



だけど、言ってることは意外と的を得ていて。


確かに告白しようって時に人の知恵借りてちゃ想いも伝わらないような気もするし、

そうなると告白の経験がない一人称は正攻法でぶつかるしかないワケで。




「そしたら今度はビビリの名前が本当に言えるのかってことが気になっちゃってさぁ…(笑)」




それにここで引き下がったら

結局いつまでも言えないままで高校生活を終えそうな気がして、

今までの自分を変えることもできない




「おまけに相手はあのゆいぽんだよ?
どう考えてもうまくいくとは思えないっていうか…」




もちろん話しかけるのも、告るのも、フラれるのも恐い。


言わなければ傷つかずに済むってことも十分理解してる。



それでも


一人称は本当に小林さんのことが…







『…あのさ、織田』

「ごめん名前!作戦はまた今度考えるから今日はいったん…」


『一人称、行ってくるわ』

「は?ちょ…名前!?」




友人の驚いた声を置き去りにして、踏み出した教室への一歩

目指す場所は奥の窓際、真ん中辺り


さっきまで一緒だったショートカットの子は…

決意を固めてる間にどこかへ行ったみたいで、ラッキーなことに今はいない。


横目で確認した教室にいる同級生たちも一人称に気づいてないっぽいし、


なんだかんだでチャンス!



意外にもポジティブな情報を視界が多めに捉えたせいなのか

緊張しまくってるのになぜか歩幅は大きくなる




そしてあっという間に距離は縮まって


目の前には






『こ…小林さん!』





まさに天使のような佇まいで

窓の外を眺める彼女がいた。
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