欅坂 (短編)

□After Light
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そのライバルの名前は

どうやら土生というらしい



由依ちゃんと一緒にバイトをしていて

かつ一人称の友人でもある織田さんから得た情報



一人称が彼を初めて見かけたのは一ヶ月くらい前なんだけど



その時から由依ちゃんにめっちゃ話しかけてて…



どうすれば良いのか分かんないって顔して彼女も応対してるように見えたから

最初は変わったヤツだなってくらいの印象だったんだけど



最近は困ってるどころか

由依ちゃんも楽しそうに喋ってて状況は一変



どうやら不思議なキャラクターに加えて

コミュニケーション能力も高めらしい



いつでもどんな時でも由依ちゃんはお客さんに対して笑顔だけど

土生と喋っている時は四割増しに見える



しかも織田さんが言うにはこの間三人で遊びにも行ったって…



恐るべし社交性



もちろん一人称は由依ちゃんと遊んだことなんてない

織田さんとはあるけど…



由依ちゃんがバイトを始める前から織田さんはここで働いてたから

いつからか友達になってて2~3回遊んだことが…





まぁ、その話はいいか





さらに認めたくはないけど土生は高身長のスタイル抜群

かつ端正なルックスの持ち主で…



ついこの間も街で逆ナンされてたのをたまたま見つけちゃったんだけど



それでホイホイついていってたら悪口の一つでも言えたのに

全然ナンパしてきた子を相手にしてなかった



正直かなりカワイイ子だったのに



その話を織田さんにしたらテンション高めに詳しく聞かせろってせがんできたな…





まぁ、それも置いといて





とにかく

もしこのまま土生が由依ちゃんにアタックし出すと


一人称じゃ手に負えなくなる


アイツみたいに顔がカッコいいワケじゃないし

彼女を心から笑顔にさせる術も持ち合わせていない



ハッキリ言って勝てる気がしない




唯一負けないのは

きっと想う気持ちだけ




でも後には引かないって決めたんだ




本当に彼女が大好きだから






そして今

一人称はいつも通りこの店でメニューを注文しようと並んでる



ふと前を見ると並んでたおばあさんにもめちゃめちゃ神対応…



イイ子だよなぁ、ほんとに






しばらくすると一人称の番がやってきて

この溢れそうな想いには全く気づいてないであろう彼女は

いつも通りの笑顔で迎えてくれた






「いらっしゃいませ…なんか今日、雰囲気違わない?」

『そ…そうかな//』

「うん、ちょっと顔が強張ってる(笑)」




冗談で言ったのか

やけに明るく笑ってる



でもそのおかげで

予想以上にスムーズな展開を作り出せた





『…ちょっと、告白しようと思ってて』

「…えっ?」





店内の賑やかさに紛れるみたく

その場の空気と勢いに任せて





『一人称、好きな人がいるんだ』

「へぇ…そうなんだ、いきなりでビックリ(笑)」

『…』

「…どんな人なの?」






伝えたい想いを

まっすぐに吐き出した





『由依ちゃん』

「…何?」

『一人称の好きな人……由依ちゃんなんだ』

「…」






意外にも

スッと言えた自分に驚く



けどそれくらい一人称の中で彼女への想いは

もう止められないものだから



後はただひたすらに

奇跡が起こることを祈るだけ…





「ごめん…仕事中にそういうのはちょっと困る」

『…』





















視界を埋め尽くす

若干の戸惑いと嫌悪感





土壇場でやらかした



彼女が仕事に対し



一生懸命なタイプだったことを忘れるなんて





「後ろに他のお客様も並んでるし…悪いけどもういいかな」

『…』





真顔でレジへと視線を反らす彼女

きっとこれは否定のサイン

脳内に生まれた冷静な時間と答えを合わせる




















あぁ



そうか



一人称





フラれたんだ…
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