アイドル部って、なに? (長編)

□エース
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「…お待たせいたしました///」









一分後

背を向けて待っていた一人称に声をかけてくれた白石さん



振り向くとさっきよりもさらに斬新な格好をしていて…




びしょびしょな制服姿とはうってかわって

なぜか今度は体に大きなタオルをぐるぐる巻いてる



そして次に目に入ったのは辺りに散らばっている

濡れた制服のシャツやスカート






ということはもしかしてその下は…





って、なに考えてんだ一人称!?

マジで落ち着け!!








『ふぅ…//』

「…名前?」









とはいえこの状況




誰もいない部室に

アイドル部のエースと二人きり





何だか緊張する…







「それよりごめんホントに!驚いたよね…」

『いやっ、こっちこそすいません!』





若干の気まずさがある中でのぎこちない会話


けど今はそれよりその格好のほうが気になるんだけど…




なんて考えていると

恥ずかしそうにしながらこの状況の説明をし始めた白石さん



どうやらいつもの紫色のジャージを持ってくるのを忘れてしまい

仕方なく制服で部活をやっていたみたいで



そしてその制服が練習中にパイまみれになってこの有り様らしい




それを落としてたから制服が濡れてたり白くなってんのか…








てかなんでパイが出てくんだろ

今日は振り付けの練習だよな?




なんというか、

さすがアイドル部って感じだな…





尚更遅れて行けて良かった







『…で、替えの服がなくて困ってたところに一人称が来たってことですか?』

「そういうことでございます…///」








なるほど…


とりあえず状況は把握できた


パイが出てきた謎はまったく解決してないけど

とにかく着るものがないってことみたいだから

一人称のジャージでも貸しとくか





確かカバンに入れてあったはず…












あれっ?




入ってない




まさか一人称も忘れた?




間抜けな自分が信じられなくて

ジャージが入っていると思い込んでいたカバンの中をもう一度捜索していた時








「ねぇ…ちょっと聞いてもいい?」







突然飛んできた質問


まさか急に来たこと怒られる?


けどあれは不可抗力だし…






なんて考えていると

予想とはまったく違う質問で







「名前から見た私ってさ、どんなイメージ?」


















イメージ?







「正直でいいから聞かせてほしくて…」







突然のことに驚きつつ

おそるおそる表情を確認



冗談言ってるようには見えないし本気なんだろうけど

いきなりイメージって…



恥ずかしさのせいでテンパってるのか

それとも気まずさをまぎらわすためか





よく分かんないけど

とにかく白石さんはそれを知りたいらしい







『えっと…そうですね、まず白石さんは第一印象からキレイな人だなぁって思ってて』

「いやいや…//」

『でもエースって呼ばれてたから若干近寄りづらいイメージもあったんですけど』

「おぉ、なるほど…」

『けど最近ちょっとずつ関わるようになって…今はアイドル部のお姉さん的存在の完璧な人って感じですかね』







正直に

そしてまじめに白石さんの印象を伝えた一人称


けど彼女の反応はワンテンポ遅れてて






「そっかぁ……いやいやいや!キレイだなんてそんなことないから(笑)」






あの…

そこのくだり割と最初のほうでしたけど



ジャージの件といい、

ちょっと抜けてるところもあるのか?




けどそれに関しては彼女も同じことを思っていたみたいで




「ほんとは全然そんなことなくて…いつも優柔不断で、態度がすぐ顔に出ちゃうし」

『そう…ですかね?』

「そうなのよ!皆がいたら変なことして笑わせたいって思うし…」






意外な事実

完璧に見える白石さんが自分のことをそんな風に思ってたなんて…




けど最後のは悩みか?






「でもメンバーにはダメな部分も見せたくなくて…エースって呼ばれてるし、しっかりしなきゃって思いもあるから」

『…なるほど』

「でも最近はそれが精神的にもキツくなってて…」

『…』






一人称が黙ってしまったせいか

どんどん溢れてくる彼女の思い



目立つ人ならではの悩みはあるってことなんだろうけど







「どうしよぉ…(泣)」






困ったな…

目の前には瞳に涙を浮かべる白石さん





もちろん力にはなりたいし助けたいって思いもあるんだけど

ぶっちゃけ一人称なんかじゃどうすることもできない…



それにすぐさま答えが出るはずもなく







『…』

「ぅぅ…」







何ともいえない気まずさが本格的に押し寄せ始めた








その時





廊下から




微かに聞こえてくる足音







2人…いや3人か?


こっちに向かってきてる



それによく聞き覚えのある声もする…





まさかメンバーが戻ってきた!?





もしそうならこの状況





かなりヤバい





だって白石さん泣いてるし

下着姿にタオル一枚だし

部屋には一人称しかいないから



これって勘違いされちゃうと厄介なことになっちゃうんじゃ…






一瞬にして頭をよぎった最悪の展開



それと同時に視界に入ったのは

アイドル部が用具入れとして使っている縦長のロッカー





悩んでる暇がないと感じた一人称は

いつのまにか彼女の手を引いていて







『白石さん、こっち!』

「へっ?あ…おぉ…っ、」








無我夢中で






その狭い密室へと飛び込んだ。
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