book
□読書をしましょう
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「……はぁ、またかよ」
頭を掻き毟ると、エレンは再び辞典に手を伸ばした。
「えーーっと、これは……?、ん?なんだこれ……」
「『敵戦計』、だ。兵法の中でも、こちらが優勢な状況で使うものの総称だ。敵の油断を誘ったり、隙をついて攻める戦法が載っている」
「あぁなるほ……、ど……?」
突然後ろから聞こえてきた声に、エレンはピシリと固まった。
ポン、と肩に手を乗せられる。
「おいエレン……全然進んでねぇじゃねぇか」
「へへ、へいちょっ、あ、うわっ…!!」
振り返ろうとして、誤って本の山にぶつかってしまった。
誰かさんがこれでもかと積んだせいで、バランスは最悪だ。
ぐらりと揺れる山を、慌てて抱きつくようにして支えた。
エレンが持っていた本が、ばさりと足元に落ちる。
埃っぽいそれらの書籍を助けようなどとは、リヴァイ兵長には微塵もないらしい。
こうなった原因の半分は兵長にありますよ、という意思を込めてリヴァイに視線を送る。
すると、やれやれと言いたげな兵長は、エレンが落とした一冊をつまみ上げた。
それじゃない、と言いたいが、残念ながら、エレンにその勇気はない。
リヴァイは尚も送られるエレンの視線を無視すると、そのつまみ上げた本を、なんとなしに捲ってみた。
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