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□読書をしましょう
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「…………、」
「ふぅ、何とかこれで崩れないかな……。って、あれ、兵長、どうかしたんですか」
エレンが本の山との格闘を終えて振り返ると、兵長が、先ほどの本を睨んだまま固まっていた。
「兵長……?」
「おい、エレンよ」
首を傾げて近づくと、呼びかけると同時に名前を呼ばれた。
「は、はいっ」
そうすると、条件反射で気を付けの姿勢を取ってしまう。
悲しいかな、兵長の躾という名の暴力の成果である。
「……お前、最終学歴はどこだ」
「え……」
突然の質問に、思わず間抜けな声を出してしまう。
「チッ、学校には行っていたのか、と聞いているんだ」
「あ……、その……、」
つい口ごもってしまう。
事実を口にするには、少しためらいがあった。
そんなエレンを見て、兵長はフゥ、とため息をついた。
「……まぁいい、少し待ってろ」
そう言うと、手に持っていた本を机に戻し、本棚に向かって歩いていった。
しばらく歩きまわっていたかと思うと、一冊の本を手に、戻ってきた。
それを、ス、と目の前に差し出される。
その本を見、次いで、兵長を見た。
「……兵長、これは?」
「読んでみろ」
と言われても、エレンの学の無さは、先ほどの流れから明らかなはずだ。
ためらっていると、視線で、「早くしろ」、と言われ、エレンはおずおずと本に手を伸ばした。
*