book

□読書をしましょう
7ページ/7ページ



パラ、と捲ってみる。

真っ先に目に入ってきたのは、大きく描かれた挿絵だった。

巨人と人間が描かれている。

歴史書、なのだろうか。

見開き全体に目を通すと、右上に、短い文章が添えてあった。

それは、先ほどまでの本とは違い、ごく簡単な言葉を使って書かれており、多少時間はかかるかもしれないが、エレンでも読めそうなものだった。


そっと視線を上げると、「読めるか」、と尋ねられた。


「は、はい、このくらいなら」

「よし。……なら、それがお前の教科書だ。すらすら音読できるまではそれを使え」

「え……?」

思わず兵長を見つめる。


「わからないところは俺に聞け」

そう言うと、さっさと踵を返してしまう。

ハッとして、慌ててその後ろを追った。

「へっ、兵長、それはどういう……」

わたわたと声を掛けると、立ち止まった兵長が、不機嫌そうに振り返った。

「チッ、なんだ、…俺に教わるのが不服か」

「そっ、そんなこと……!!!」


ありません、と言って、慌てて首を振る。

ただ、信じられなくて、視線が泳いでしまう。

そんなエレンを見て、兵長がフン、と鼻を鳴らした。


「お前は、巨人をぶっ殺して未来を生きるんだろ。そのくらい、出来るようにして損はねぇ」

「……っ」

「わかったらとっとと行くぞ。飯の時間だ。……チッ、埃くせぇな」

そう言うと、足早に出口へ向かってしまう。

ただ、なんだかんだ、エレンを待って入口にいてくれる辺り、兵長は優しい。


本を握りしめたまま、エレンはうつむいた。

……巨人を倒した後のことなんて、考えたこともなかった。

兵長はいつも、たくさんのものをエレンに与えてくれる。

エレンの居場所を作ってくれたのも、今こうして、解剖されずに生きているのも、リヴァイ兵長のおかげだ。

彼のために、自分は何が出来るんだろう。

「……兵長、」

「なんだ」

呼びかけて、顔を上げた。

「俺、頑張りますね」

まっすぐ目を見て言うと、兵長が珍しく、驚いた顔をした。

けれどそれも一瞬で、すぐに、いつもの仏頂面に戻ってしまう。


「……当たり前だ、3日でその本すら読めなかったら、また身体に叩き込んでやる」

「はいっ」

威勢のいい返事を返すと、今度こそ兵長の後を追いかけて、エレンも図書室を後にした。










まじでスパルタだったというのは、後日の話。




《後記》

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

ろろの、『エレンって学校行ってたのかなぁ』、という素朴な疑問から生まれた話です。

そして兵長は、地下街で名を馳せていたという辺り、きっと知恵も働くはず!!、という、ろろの勝手な妄想により、学力高め設定。

実は兵長が選んだ本は、兵長が自己流で勉強をするにあたり使っていたものだった、みたいな裏設定を考えましたが、めんどくさいのでカットしました。


お粗末様でした。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ