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□読書をしましょう
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パラ、と捲ってみる。
真っ先に目に入ってきたのは、大きく描かれた挿絵だった。
巨人と人間が描かれている。
歴史書、なのだろうか。
見開き全体に目を通すと、右上に、短い文章が添えてあった。
それは、先ほどまでの本とは違い、ごく簡単な言葉を使って書かれており、多少時間はかかるかもしれないが、エレンでも読めそうなものだった。
そっと視線を上げると、「読めるか」、と尋ねられた。
「は、はい、このくらいなら」
「よし。……なら、それがお前の教科書だ。すらすら音読できるまではそれを使え」
「え……?」
思わず兵長を見つめる。
「わからないところは俺に聞け」
そう言うと、さっさと踵を返してしまう。
ハッとして、慌ててその後ろを追った。
「へっ、兵長、それはどういう……」
わたわたと声を掛けると、立ち止まった兵長が、不機嫌そうに振り返った。
「チッ、なんだ、…俺に教わるのが不服か」
「そっ、そんなこと……!!!」
ありません、と言って、慌てて首を振る。
ただ、信じられなくて、視線が泳いでしまう。
そんなエレンを見て、兵長がフン、と鼻を鳴らした。
「お前は、巨人をぶっ殺して未来を生きるんだろ。そのくらい、出来るようにして損はねぇ」
「……っ」
「わかったらとっとと行くぞ。飯の時間だ。……チッ、埃くせぇな」
そう言うと、足早に出口へ向かってしまう。
ただ、なんだかんだ、エレンを待って入口にいてくれる辺り、兵長は優しい。
本を握りしめたまま、エレンはうつむいた。
……巨人を倒した後のことなんて、考えたこともなかった。
兵長はいつも、たくさんのものをエレンに与えてくれる。
エレンの居場所を作ってくれたのも、今こうして、解剖されずに生きているのも、リヴァイ兵長のおかげだ。
彼のために、自分は何が出来るんだろう。
「……兵長、」
「なんだ」
呼びかけて、顔を上げた。
「俺、頑張りますね」
まっすぐ目を見て言うと、兵長が珍しく、驚いた顔をした。
けれどそれも一瞬で、すぐに、いつもの仏頂面に戻ってしまう。
「……当たり前だ、3日でその本すら読めなかったら、また身体に叩き込んでやる」
「はいっ」
威勢のいい返事を返すと、今度こそ兵長の後を追いかけて、エレンも図書室を後にした。
*
まじでスパルタだったというのは、後日の話。
《後記》
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
ろろの、『エレンって学校行ってたのかなぁ』、という素朴な疑問から生まれた話です。
そして兵長は、地下街で名を馳せていたという辺り、きっと知恵も働くはず!!、という、ろろの勝手な妄想により、学力高め設定。
実は兵長が選んだ本は、兵長が自己流で勉強をするにあたり使っていたものだった、みたいな裏設定を考えましたが、めんどくさいのでカットしました。
お粗末様でした。