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□休みはイチャイチャしましょう 
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「兵長……本当に大丈夫ですか?」

大きな荷物を抱えたぺトラが、不安そうな顔をして振り返った。

「あぁ」

旧調査兵団本部である古城を背にした兵長が、ゆっくり頷いた。

ぺトラの隣で、同じように荷物を抱えたオルオが、リヴァイの隣に立つエレンを見ると、怖い顔を作った。


「おい新兵、俺たちがいない間、リヴァイ兵長に何かしてみろ、ただじゃおかないからな」

「……オルオ、黙って」


そんなオルオの耳を引っ張ると、ぺトラがリヴァイに向き直った。


「では兵長、三日後に。……エレンも、またね」

「あ、は、はいっ、気を付けて行ってきてください」


綺麗なぺトラにニコリと微笑みかけられて、思わずドギマギしてしまう。

手を振りながら遠ざかっていく彼女につられて、エレンも小さく手を振りかえした。

が、何が気に入らなかったのか、そうして二人の姿が見えなくなるまで見送っていると、背中に兵長の膝蹴りをくらってしまった。


「なっ、なんですか!?」

「チッ、うるせぇ、さっさと中に入るぞ」

―――理不尽だ。

背中をさすりながら、やや小柄な兵長の背を追う。





*****


今日から三日間、調査兵団は小休暇に入る。

常に命の危険にさらされるのがこの仕事だ。

休暇中は、大抵の団員が家族の元へと帰っていく。

リヴァイ班の面々も例外ではなく、さきほどのぺトラやオルオのように、いつも心配をかけている両親へ親孝行をしに帰るメンバーも多かった。

よって、いつも班で使っている一角に現在残っているのは、リヴァイとエレンだけである。


「……すみません、兵長、俺に付き合わせるような形になってしまって……」


いつもより格段に静かな談話室で、エレンは兵長にコーヒーを淹れていた。

兵長は、白いティーシャツに黒のスウェットという、ラフな格好で椅子に腰かけている。


「お前が気にすることじゃねぇ。お前を俺が監視するのは、定められたルールだ」


出されたコーヒーに口をつけながら、兵長は何でもないことのように話す。

そう言われてしまうと、エレンには何も言うことが出来ない。

持っていたトレーを両手で握りしめながらうつむいていると、ふいに、「エレン」、と名前を呼ばれた。

顔を上げると、「来い」、と呼びかけられる。


「は、はいっ、何でしょう」


小走りで近寄ると、リヴァイが自分の膝をポン、と叩いた。


「座れ」


思わず、膝とリヴァイの顔を交互に見てしまう。


「…………え?」

「座れ」

尚もポカンとしていると、聞き分けの悪い子供にでもするように、同じ言葉を繰り返された。

ややあって、彼の意図するところに気づいたエレンは、みるみるうちに真っ赤になった。


「いや……、あの……、う……」


視線をうろうろと彷徨わせてみるが、まっすぐ自分を見つめる兵長の視線から逃げられる気がしない。


「エレン」


結局おずおずと、兵長の傍に近寄った。


「は、はい、あの……、失礼します…、って、わっ!」


控えめに腰かけようとしたエレンに気づいたのか、背を向けた途端、腹に手を回されて、強い力で抱き寄せられた。

背中にリヴァイの体温を感じて、エレンは顔から湯気が出てしまうんじゃないかと、本気で思った。


「す、すみませっ、っ……!!」


慌てて立ち上がろうとするも、リヴァイの、見た目からは想像できない腕力で阻まれ、結局バタバタして終わった。


「クッ……、」

「っ……!!」


耳元で笑われて、ゾクゾクしてしまう。


「熱いな、エレン」

「ーーーっ!、へ、兵長、も、勘弁してくださ……っ」


余裕綽々な兵長とは違って、エレンは恋愛初心者だ。

先日、玉砕覚悟の告白で、まさかのオーケーをもらったエレン。

それ自体は嬉しいのだが、何といっても15歳。

恋人になった先に一体何が待ち受けているのか、正直、全くわかっていなかった。


「ハッ、まだ何もしてないだろうが」

「ーーーっ、み、耳元で、しゃべらないで下さい……」


兵長に耳元で喋られると、先日のあの行為を思い出してしまって、恥ずかしいだけじゃない、別の感情まで湧いてきそうで、それが怖かった。


「黙ってろ」

「……っぁ」

優しく首筋に口づけられる。

またゾクゾクが襲ってきて、エレンは思わず、腹部にまわったままの兵長の腕を掴んだ。

その拍子に、持っていたトレイが手から滑り落ち、カラン、と音を立てて転がった。


「あ……」

「エレン」

「ん……、兵、長……」

耳を食まれて、顔に手を添えられる。

促されるままに顔だけ後ろを振り返ると、優しく口づけられた。


「兵長……俺、」

「あぁ、わかってる」


兵長は、言葉数こそ少ないものの、いつもエレンの気持ちを的確に汲んでくれる。

いつだって不安なエレンの心を、大きく包み込んでくれる。



―――今回の休暇は、突発的なものではない。

おそらく、十日後に差し迫った壁外遠征に向けて、家族、恋人へ挨拶をして来い、ということなのだろうと、調査兵団に入団して日の浅いエレンにさえも理解できた。

そして、エレンを連れて行くということは、成果なし、では帰ってこれない、過酷な遠征であることも、団員全員が知っていた。

不安げに揺れるエレンの金の瞳を見据えて、リヴァイが囁く。


「お前はこの三日、何も考えず俺に甘えてろ」

「…………ん」

ちゅ、とまた口づけられた。

「いいか、エレン……、壁外に出たら、俺はお前の恋人ではいられねぇ」


その一言に、少なからずショックを受けた自分を、エレンは恥ずかしく思った。

せめてその感情を表に出さないようにしようと努めたものの、兵長の表情を見る限り、それは失敗だったとわかる。


「悪いな……、ただ……その分、兵士長じゃねぇ時の俺の時間は全部お前にくれてやる」

「…………っ!」


思わず大きく目を見開いた。


「そんな……兵長……、」

「わかったら、お前はこの三日、俺の傍を絶対に離れるな。……たっぷり可愛がってやる」

「ーーーっ!!」


ニヤリ、とそれはそれは悪どい顔で微笑まれて、エレンはひゅ、と身をすくませた。


「久しぶりだ……、今夜は寝れると思うなよ?」

「―――っ!!、そ、そ、」


その顔と台詞は反則です!!、と内心叫んだエレンだったが、その叫びもろとも、リヴァイの口の中に吸い込まれていった。









休暇明け、なぜか心持ちやつれたエレンがいたそうな……

ちなみに二日目以降は、鬼姑と化したミカサがやってきて、とてもイチャラブ出来ませんでしたとさ!!




《後記》

恋人になった二人を書けましたーーー!!!

この調子で増やしていきます。

そしていつか、あこがれのリヴァイとミカサにサンドされるエレンを書きたいなと思う今日この頃です。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!





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