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□悩みがあります
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黙々と階段を上っていくリヴァイの後ろを、エレンはうつむきながら付いて歩いた。

カツンカツンと、二人分の靴音だけが響く。

リヴァイが持つ松明の明かりが、ぼんやりと辺りを照らしていた。


「……あの、ほかのリヴァイ班の皆さんは……?」

沈黙に耐えられなくなって、小声で聞いてみた。

「今日の訓練は終いだ。それぞれ自室で休んでいる」

振りからずに、リヴァイが応える。

「そう……ですか」

話題終了。

そもそも、この人との共通の話題などないのだから、しょうがない。

ただ、そうと分かってはいるのだけれど、沈んだ顔をしてしまうのはどうしようもなかった。

頭に、ミカサやアルミンを初めとする、104期生の面々が浮かんだ。

同じ調査兵団の一員とはいえ、エレンの行動は、上からの取り決めによって、極端に制限されている。

今のように、兵長を伴わなければ、地下牢から出ることさえままならなかった。

……会いたい。

思わず零れそうになった考えを追い出すように、頭を振ると、改めて、兵長の背中を見た。

前を歩くその背中は、世間が言う、人類最強の兵士にしては小さい。

彼を大きく見せているのは、その背中に、幾人もの想いを乗せているからだ。

リヴァイ兵長は、懐に入れた仲間を本当の家族のように大切にしている。
彼が、毎朝、巨人との戦いで死んだ仲間の墓参りに行っているのを、エレンは知っていた。

その多くが、死体すら回収できなかったと、静かに憤りながら語ったリヴァイの表情を、エレンは忘れない。

そして、決して口には出せなかったけれど、死んでからも兵長にそこまで思ってもらえる、名前すら知らない誰かを、うらやましい、と思った。

巨人化できないエレンは、本来なら、リヴァイ班に入れるような実力ではない。

くやしいが、それはエレン自身がよく分かっている。

だからこそ、今の自分を兵長がどう思っているのか、怖くて仕方なかった。

ギィッと音を立ててリヴァイがドアを開ける。

涼しい夜風が二人の髪の毛をかき混ぜた。

少し肌寒いが、地下よりよっぽど清々しい空気に、エレンはハッと顔を上げた。

「さっさと来い、愚図」
「は、はいっ……!!すみません、」

目の前で、兵長が重たい扉を、閉じてしまわないように腕で支えていた。


慌てて外に出たエレンは、そうして、目の前に広がる光景に息をのんだ。







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