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□悩みがあります
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「…………綺麗、だ、」



そこは、満天の星空だった。

ぼんやりと歩いていたエレンは気づかなかったが、いつの間にか古城の最上階まで登ってきていたらしい。

視界を遮るものは何もなく、先ほど感じた風が、雲を攫って行ってくれたらしく、夜空は、とても澄んでいた。


バタン、と扉の閉まる音が聞こえるまで、エレンは、そこに兵長がいることすら忘れて、ただただ空に見入っていた。


「……気に入ったか」


声を掛けられて、エレンはビクリと震えた。

しまった。

完全に自分の世界に入ってしまっていた。


「はははいっ!!すみませんっ…!、俺、つい見入っちゃって……!」

「気に入ったんならいい」


そう言って松明を壁の台座に置くと、エレンの方に歩いてくる。

どうしていいかわからず、エレンは思わず敬礼のポーズをとった。

「あほか」
「おふっ……!?」

容赦なく腹を蹴られ、ズダーン、と仰向けに倒れた。

したたかに打った後頭部と背中が痛い。

涙目で見上げると、兵長が足をエレンの腹に乗せたまま、腕組みをして見下ろしていた。
思わず恨みがましい視線を送ってしまった自分は、悪くないと思う。


「今は任務中じゃねぇ。……まぁ、お前には本当の自由を与えてやれねぇが」

そう言って、すっと足をどける。

「あ……」

思わず声が漏れた。
こうして寝そべっていると、視界が全部夜空で埋まる。

―――まるで、空に寝てるみたいだ。


「これが、今俺がお前に与えてやれる最大の自由だ」
「っ……」

そう呟くと、潔癖症の彼にしては珍しく、エレンの隣にドカッと腰を下ろした。



「……で、エレンよ、お前、最近なにをぐだぐだ悩んでる」






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