book
□悩みがあります
3ページ/5ページ
「…………綺麗、だ、」
そこは、満天の星空だった。
ぼんやりと歩いていたエレンは気づかなかったが、いつの間にか古城の最上階まで登ってきていたらしい。
視界を遮るものは何もなく、先ほど感じた風が、雲を攫って行ってくれたらしく、夜空は、とても澄んでいた。
バタン、と扉の閉まる音が聞こえるまで、エレンは、そこに兵長がいることすら忘れて、ただただ空に見入っていた。
「……気に入ったか」
声を掛けられて、エレンはビクリと震えた。
しまった。
完全に自分の世界に入ってしまっていた。
「はははいっ!!すみませんっ…!、俺、つい見入っちゃって……!」
「気に入ったんならいい」
そう言って松明を壁の台座に置くと、エレンの方に歩いてくる。
どうしていいかわからず、エレンは思わず敬礼のポーズをとった。
「あほか」
「おふっ……!?」
容赦なく腹を蹴られ、ズダーン、と仰向けに倒れた。
したたかに打った後頭部と背中が痛い。
涙目で見上げると、兵長が足をエレンの腹に乗せたまま、腕組みをして見下ろしていた。
思わず恨みがましい視線を送ってしまった自分は、悪くないと思う。
「今は任務中じゃねぇ。……まぁ、お前には本当の自由を与えてやれねぇが」
そう言って、すっと足をどける。
「あ……」
思わず声が漏れた。
こうして寝そべっていると、視界が全部夜空で埋まる。
―――まるで、空に寝てるみたいだ。
「これが、今俺がお前に与えてやれる最大の自由だ」
「っ……」
そう呟くと、潔癖症の彼にしては珍しく、エレンの隣にドカッと腰を下ろした。
「……で、エレンよ、お前、最近なにをぐだぐだ悩んでる」
*