Ag魂
□後のことはよろしくね
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「攘夷志士も幕府も、バカだよねぇ」
私が補佐をつとめる真選組の副長に、わざと聞こえるように言うと、予想通り彼は吐き捨てるように煙を吐き出した。
「またそれかよ」
「だって、殺す必要はどこにもないじゃないですか。
このままじゃ私、地獄行きは確定ですよ」
わざとらしく溜息を零す。
すると、後ろからぱたぱたと小気味悪い足音が近づいてきた。
誰だか分かる、所詮土方を想っている人間だ。
軽いリズムを刻む足音は、まるで宙に浮いた死人のよう、なんて。
「死人といえば、」
「その話はやめろ」
「そうですよぉ、私も十四郎さんも怖いんで」
自然に会話に入ってきた女に、イライラとした感情などは湧いてこない。
そもそも女の嫉妬など、女らしくない私がするわけないのだ。
「怖い、のかあ……そんなこと言ったら、近づいてくるのに」
「や、やめろォォォォ!」
「キャーッ、こわい!!」
さりげなく土方に寄り添う女。
ああ可愛いねぇ、なんて私はどこのババアだ。
まあ会話を聞いて分かる通り、私は所謂霊感ってヤツを持っている。
これはちっちゃい頃からのもので、結構強いものらしく常に視界には霊がいる、という超常現象をもう何十年も続けている。
たまに触れたり、触られたりもするし、会話もたまぁに出来る。
見えなくなればいいのに、とは常日頃思うのだ。
だから、先日に霊から持ち込まれた話はとても魅力的だった。
「おい、大丈夫か?」
私の目の前で大きな手を振った土方。
ああうん、と適当に相槌を打って私は自室に戻った。