時をかける少女達 book
□第九夜
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彰子の部屋を出て、和輝は清明の部屋へ行き、彰子の眠っていた原因を説明した。
「・・・では、彰子様は夢に侵されていたと?」
「えぇ あの表情から言えば、まだ軽い方でしょう。悪ければ衰弱死してしまう可能性がありますから」
「あの勾玉の出どころは?」
「大体の予想はついている・・・だが・・・・・・」
「まさか・・・蓬莱山から出てきた勾玉だったとは・・・・・・」
「伝説上の代物ではなかったと言うことか・・・」
和輝が自室に戻った後、勾陳・青龍・六合・朱雀が顕現した。青龍・六合は黙ったまま、朱雀にいたっては天一の事で頭がいっぱいなのだろう、彰子の部屋を凝視している。
「大体、あの四聖獣とか言う奴信用していいのか?天貴と同じような気配はしたが・・・」
「四聖獣の朱雀とは、鳳凰とも呼ばれておる。その身体から放たれる炎は全てのものを浄化し、流れる涙は傷を癒す。小さな身体で、自分よりもはるかに重い荷物を持って運ぶことも出来るらしい」
清明は自分の持つ四聖獣、朱雀の知識を全て話し、それを聞いた四人は驚いていた。
「オィオィッ・・・、それじゃあの紅璃って奴以外にも後三人いるってことか!?」
「おそらくな。それに、神位も十二神将より上じゃろうて」
「フンッ これで分かったな。清明よ、あの小娘どもを今から追い出せ。主であるお前に危害を加える前に」
「これ青龍よ、そのような酷な事を言うな。それに、こちらの会話は筒抜けじゃろう」
清明はつい・・・と、窓の外に視線を向けた。そこには、何ら変わりない一匹の蝶が窓枠に羽を休めていた。
「あの蝶がどうかしたのか?」
「ついに頭でも狂ったか、老体の分際で離魂の術を使うからだ」
青龍の棘のある言葉にしかめ面をした清明だが、違うわいと呟いた。
「アレは和輝殿の式じゃ。和輝殿がこの部屋から出て行って直ぐに飛んできたぞ?勾陳は気付いておったようじゃがの」
そう言う清明は、持っていた扇で口元を隠しホケホケと笑っていた。そんな清明を見て、勾陳以外の神将達は苦い顔をしていた。
「おや?」
窓枠に止まっていた蝶が動き出し、勾陳の元まできた。清明は不思議がりながら、蝶と勾陳を交互に見やった。そして、扇の下で少しだけ口をつり上げた。
「勾陳、和輝殿の部屋に行ってこい」
「清明?」
「あの話の続きが聞けるのは勾陳だけと言うことじゃよ」
「わかった」
勾陳は少し考え、納得したのか蝶の後を追うことにした。だが、勾陳は六合の前で足を止めた。
「お前も来るか?六合」
「・・・・・・」
六合は無言のまま勾陳を見た後、蝶に目をやった。
「別に無理を言ってあるわけじゃなさ。お前自身で決めるといい」
「・・・わかった、一緒に行こう」
「では清明よ、少しばかり外れる」
「あぁ 出来れば、そのまま和輝殿の護衛をしてくれんかの」
「私は別に構わないが、六合はどうする」
「俺と勾陳、どちらかが一人づつに交代でつけばいいだろう、昌浩には騰蛇がついている」
「それもそうだな」
そう話しながら、勾陳と六合は蝶の後を追った。