時をかける少女達 book

□第十夜
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和輝は庭にでると、準備運動として柔軟をしていた。


燐「あれ?和輝もしかして今から鍛錬?」

和輝「あぁ 最近全然やってなかったからな。清圃とやろうと思って」

宵「僕達も最近してないよね」


確かにと燐は頷く。こちらに飛ばされる前は何かと忙しく、鍛錬というものが出来なかった。


清【 主 今回はどうするつもりだ? 】

和輝「今回は組み手。接近戦が主になってるし、なにより剣は清明様に預けたしな」

燐「ところで和輝?まさかと思うけど、その髪型のまんまでするなんて言わないわよね?」


燐が指摘する和輝の髪型。本来なら後ろで結われているが、今は前で緩く結われているだけだ。


和輝「別にこのくらいなら気にならないし、そのままでするけ「そんなのダメよ!!」」


血相を変えた燐が叫んだ。いきなり叫んだ燐に、和輝も宵も驚いた。


燐「髪は女の命!もともと整えれば、和輝の髪綺麗になるんだから、ほっといちゃダメでしょ!!」

和輝「あ〜そうですね、ンで?今日はどんな髪型をお望みで?」


和輝が投げやりにそう言うと、燐の表情は満面の笑みへと変わった。


燐「ポニーテールにした〜い!!」


一人はしゃぐ燐。そんな燐に、和輝は頭を抱えた。


和輝「はぁ、分かった。燐の好きなようにしろ」


和輝はそう言うと、燐のそばに行き腰を下ろした。縁側に座った和輝。すぐに終わると思っていたようだが、なかなか終わらず、それどころか結われていると言う感覚が全くない。


和輝「燐・・・・・・早くしてくれ」

燐「だって、櫛通せば通すほど艶が増して結うのもったいないもん!!」

 
和輝「・・・さっきは結え結えって言ったの誰だよ」

燐「それはそれ。これはこれ」

宵「和輝、諦めた方がいいよ。燐がこうなの元からだから」

和輝「だ〜〜っもぅ!!燐早く結い上げろよっ!!鍛錬出来ないだろ!!!」

燐「え―――?!ゃだまだやる〜〜〜!!」

和輝「つべこべ言うなっ!!」


いつもの和輝と燐の口喧嘩が始まった。それが日常なのだろう、宵はボケッとその様子を見ていた。


勾「私が替わろう。和輝」

和輝「頼む勾陳。燐、勾陳に櫛と紐を」

燐「むぅ〜・・・・・・仕方ない」


燐と勾陳が代わり、勾陳は和輝の髪を梳(ス)きだした。


勾「ほぅ・・・確かに梳けば艶が増していくな」

燐「でしょ!?なのに全ッ然しようとしないんだからぁ〜」

和輝「・・・・・・どうでも良いだろ、そんなの。それより勾陳、結い終わったか?」

勾「あぁ これでいいのだろう?」

和輝「アリガト勾陳」

和輝は勾陳にお礼を言うと、縁側から降りて着流しの上を全て脱ぎ、腰の後ろでまとめた。

 
和輝「さて、清圃始めるよ」


適当に距離をとった和輝と清圃。周りは二人の集中力を妨げないように黙った。両者とも全く動かない。

乾いた葉の音が響き、その瞬間に二人同時に動いた。


「 ハッ・・・ッ!! 」


和輝の左からの攻撃に、清圃は片腕で受け止める。それと同時に、清圃の足が和輝の顎へ向かう。そんな攻防戦がずっと続いた。


勾「二人とも凄いな。相手の動きをよく見ている」

六「それに、無駄な動きが全くない。全てが相手への攻撃・防御になっている」

燐「和輝は近距離・中距離・遠距離の全部出来ちゃうの」

宵「一番得意なのは・・・近距離だったかな?」


いつも呆(ホウ)けている宵がそう言うのにも、納得がいく勾陳と六合。目の前で繰り広げられている光景が、何よりの証拠だ。

清圃の蹴りと和輝の拳がぶつかり、その反動で二人は数mほど飛ばされた。両者とも、なんとか踏ん張って体制を整え、相手の首へ攻撃していく。

もちろん 息の根を止めるためではない。生きとし生けるもの全ての者は首を叩かれると、一時的に意識を失うのだ。


バキッ


何かがぶつかり合う音が、庭に響いた。二人は相手の首に足をかけようとした状態のまま、止まっている。


紅【 そこまでです 】

紅璃の声が二人を止める。勿論、二人はそれに従うように相手の首から足をどかす。


和輝「ハァ やっぱり勝てねぇ」

清【 だが以前より、集中力が増している 】

紅【 清圃の言う通りですわ。気を落とされてはダメですよ? 】

和輝「分かってるけどさぁ〜」


年相応とは思えない和輝の口からでる強さの拘(コダワ)り。何が和輝をそうさせるのか、燐や宵には分からなかった。




 
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