短い夢物語
□Soul LOVE
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俺たちが会津公から“新選組”と言う名をいただいてから一年…肌に心地の良い風がそよいでいた。江戸から京に来て…いろいろあったが、全てが夢ではないかと思うくらいだった。ふと、京の街並みを眺めようと外出した…そんな時、彼奴に出逢ったんだ。
小川が流れる橋の袂に小さな茶屋があった。目の前には大きな枝垂桜があり、暖かくなれば見事な桜がみれそうだ。
『いらっしゃぃ、何にします?』
「…茶を…」
俺は思わず、その娘に見惚れてしまった…。まだ若いだろうが、姿は大人びて見える。娘は少しだけ照れたように笑い、奥へと消えて行った。…頭を抱えた…。今は色恋沙汰に目を向ける暇など…ない…新選組を、近藤さんをもっと上に!!
『…ふふふっ…そんなに皺寄せたら色男が台無しですよ?』
いつの間にか、娘が茶を運んで来ていた…それに気付かないなど……不覚だ。うな垂れていた頭を上げ茶を飲もうとした時、コトんと御手洗団子が置かれた。
「…頼んだのは茶だけだが?」
『ふふふっ…私からです。お疲れのようですし…あ!甘いのはお嫌いかと思ったんですが、ウチのは甘さ控えめ。お口に合えば嬉しいです…』
では…とまた店の奥へと消えてしまった。そんなに疲れて見えるのかと思ったが、有難く御手洗団子を口に運んだ……。総司たちが買ってくる団子とは違い、甘さ控えめ…茶を飲むと……渋めの味…。
「…俺好みだ…」
驚くほど、俺の口に合うモノばかりだった。それから…茶が飲みたい時はこの茶屋に通った。
娘の名はルイと言い、一人でこの茶屋を営んでいるらしい…親兄弟は流行病で亡くしていた。女一人じゃ何かと心細いんじゃねぇか?と尋ねれば…
『ふふふっ…こうして土方さんがいらしてくれるもの…少しだけ心強いですよ?』
と、決まり事のように返してくる。
季節は巡り、雪の舞う冬。俺はすこしばかり忙しくなり…ルイの茶屋に顔を出せない日々が続いた。此方から文を送ってはいたが、ルイからの返事はこなかった…。
「………ルイ……」
朝焼けの空に、ポツリと呟いた………誰かに聞かれているとは知らずに、ただルイのコトが気掛かりだった。