落花流水
□それぞれの想い〜弐
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「プロデュースしたい奴がいる」
春から話があるとメンバーが集まり、開口一番驚いた。いろんなプロダクションからオファーが来ても頷きもしなかった春が…。
「へぇ…どこの事務所の娘?それとも男?」
「……今から呼びに行ってくる」
…は?呼びに行ってくる?ってどういう事か尋ねる前に、車のキーを持って行ってしまった。
「……どういう事だ?なっちゃん?」
「…春…笑っていたな」
冬馬も秋羅も驚いていて練習どころではなかった。暫くすると、何故か社長とマネージャーがスタジオに来た。そして…弁護士バッチを付けたスラリとした男も。それから十分と立たない時。春が……女子高生を伴い帰ってきた。彼女がブースに入り披露してくれた歌声に…少し涙が出た。こんなにも優しい声が…感情溢れる声が…この世にあるなんて。
「書類を確認の上、署名捺印お願いします」
渡された紙には海外にも幅広い、白桜グループの印鑑が……。
『申し遅れました。私、白桜グループ総帥…桜木ルイと申します。』
……女子高生が…総帥?
「……春の奴、相当驚いてんじゃねえか?」
「…そうだな。まさかプロデュースしたい奴が白桜グループ…まさかの総帥だぜ?」
誰もが驚いて空いた口が塞がらない。そして…契約書に書かれた違約金、一億円。隣の春を見ると、すんなりサインしている。
そっか…あの春が惚れた声。俺は…親友として、メンバーとして…。置いてあったペンを手にサインした。