落花流水

□ウェディングドレス
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June bride。グループ系列のチャペル、ホテル共に予約出てパンク寸前。だが、一件だけ…予約されないチャペルがある。それは……

「……コストが高すぎる……」

16世紀にドイツで建てられた城をイメージしたチャペル兼ホテル。太陽の光に照らされたステンドグラスがチャペル全体を別世界にする。ホテルの装飾、備品なども最高級。

「何処かの金持ちしか使わないなぁ」

担当の部署も頭を抱える物件。どんなキャンペーンをしたところで今からなんて……。ピピピピっと携帯が鳴り出ると神堂さんからだった。今から行くとだけ……今からって、何時だと思ってる?今は夜中24時。真夜中っても過言じゃないし、こんな時間にオンナの部屋に来るのも……良い話じゃないわよ。








「……夜中にすまない……」

部屋に入るとすぐリビングに通された。相変わらずルイの部屋は殺風景で、本当に此処で暮らしているのかと疑問だ。

「まだ仕事残ってるの……話は何?」

コーヒーと俺を気遣ってか、簡単な軽食を持ってルイが向かいに座った。

「……次の曲だが……ウェディング曲でコラボになる。既に曲も詩も出来ている」

「相変わらず仕事が早いのね。」

手渡した譜面を見ながらコーヒーを口にしているルイ……コラボにしたのは、意図的。今までもMVには共に出てもらっていたが、今回のテーマはウェディング……ドレスを纏ったルイの姿を一番近くで見たい。

「……わかったわ。ただ条件があるの。MVにはウチのチャペルを。きっと貴方も気にいるはず。」

俺の疚しい思いも知らず、あっと言う間に話は決まった。
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